読者の知りたいこと
レッドウィング9269は、1990年代のラフアウトエンジニアのディテールを再現した復刻モデルとして発売されました。
2018年に発売してから2020年に廃盤になるまでの間で、多くのファンを魅了したモデルでもあります。
本記事ではレッドウィングファンの僕が、9269の実際の写真を使ってその特徴やコーデのポイントなどを解説していきます。
レッドウィング8268ラフアウトエンジニアの歴史
なぜ8268の話から始まるのか?...と疑問に思われた方も多いかもしれませんが、
9269を語る上で8268の歴史は避けては通れません。
なぜなら後述するように9269は登場初期の8268の復刻モデルだからです。
レッドウィングのエンジニアブーツは元々、20世紀初頭のアメリカで鉄道機関士(レイルロード・エンジニア)と呼ばれるワーカーたちに履かれていた作業靴でした。
過酷かつ危険な仕事から、ワーカーの足を守るために作られたのがエンジニアブーツです。
20世紀後半には日本でも販売されるようになり、マーロン=ブランド主演「乱暴者」をはじめとしたアメリカ映画の影響を受けた日本の若者を虜にします。1985年からは日本で渋カジファッションが大流行し、レッドウィングが一世を風靡します。
エンジニアブーツは作業靴からファッションアイテムになりました。
エンジニアブーツが日本で流行し出した頃には、まだラフアウトを使ったモデルがありませんでした。
元々ラフアウトエンジニアは日本のファッションショップの別注で作られた特別企画モデルという立ち位置でした。
これが1991年に正式にラインナップされ、ベージュラフアウトのエンジニアブーツ「8268」として、日本のアメカジ界に浸透していきました。
1990年代のレッドウィングのラフアウトレザーは、毛足が長く、部位によって長さのばらつきが大きいレザーでした。
荒々しい雰囲気が魅力であるものの、出来上がる商品が不揃いであるという品質的な課題を抱えていました。
そこで毛足を短くカットし、部位による長さのばらつきを小さくした現行仕様のラフアウトレザーが誕生しました。
しかし、1990年代のレッドウィングのラフアウトレザーが持つ荒々しい毛並みに魅力を感じるファンもいます。
これらの商品がヴィンテージと呼ばれるようになった今の時代に、1990年代のラフアウトエンジニアが中古市場で人気を博しています。
そんな市場からの声を受けて2018年に登場したのが、本記事で紹介している9269というわけです。
レッドウィング9269は1990年代の8268の復刻モデル
レッドウィング9269は、1990年代のラフアウトエンジニアのディテールを再現した復刻モデルとして発売されました。
この頃の8268はPT83、PT91、PT99といった規格であり、「8268 PT〇〇」などと呼ばれ、ファンの間で神格化されています。
その理由は現行仕様の8268にはない以下の特徴を持っていたからです。
- ストーブパイプ(STOVEPIPE)
- ストラップベルトの位置が低い
- 赤みがかった毛足の長いラフアウト
- プレス式バックル
- ヒートプリント刻印
これらの特徴が非常にカッコ良く、ヴィンテージの8268は高い評価を得ています。
それでは1つずつ、実際の写真をお見せしながら解説をしていきます。
ストーブパイプ(STOVEPIPE)
ブーツの履き口の筒のことをシャフトといいます。
2006年以前のレッドウィングのエンジニアブーツは、シャフトが現行のものよりも細く設計されていました。
この細く絞られたシャフトをレッドウィングではストーブパイプと呼んでいます。
現行のエンジニアでは履きやすさを考えてシャフトを太く設計しています。
下の写真はストーブパイプ9269(左)と現行仕様8268(右)の比較写真です。
9269はシャフトが細く、シャープな設計であることが分かります。
当ブログでは他にもレッドウィングのストーブパイプのエンジニアを紹介しています。
気になる方はぜひチェックしてみてください。
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また、ストーブパイプは細いシャフトゆえに、足が途中で止まってしまい最後まで入らないこともあります。
そんなときはブーツストレッチャー、革のすべり剤、ブーツホーン、ブーツジャックの4つを使うことで解決できますので、興味のある方はご覧ください。
※ラフアウトは裏側がスムースレザーなので、9268などと比べてすべりがよく、ストーブパイプでも脱ぎ履きがしやすいこともあります。
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ストラップベルトの位置が低い
9269のストラップベルトは通常よりも低い位置にあります。
「低ベルト」と呼ばれているディテールですね。
下の写真は低ベルト9269(左)と通常位置9268(右)の比較写真です。
9269はベルト1本分くらい下に付いていることが分かります。
これは元々、日本のファッションショップが別注する際に「ジーンズを履いたときに裾からベルトが見えるよう、ベルト位置を低くしてほしい!」と依頼したためです。
(後述の「低ベルトを色落ちジーンズの裾から見せて履くのが流儀!」をご覧ください。)
PT99規格の2003年頃まではこの低ベルト仕様だったのですが、以降はベルト位置が通常のエンジニアと同じ高さに変更され、この独特で魅力あるディテールは失われてしまいました。
この低ベルトを欲して、リペアショップでベルト位置を低くカスタムする事例も少なくありませんでした。
赤みがかった毛足の長いラフアウト
当時の8268のラフアウトレザーは、現行のものとは異なる特徴を持っていました。
かすかに赤みがかった色合いと、ばらつきのある長い毛足という2つの特徴です。
ここでまた比較写真を見ていきます。
下の写真はストーブパイプ9269(左)と現行仕様8268(右)の比較写真です。
9269は赤みが強く濃いめのベージュで、部位によってばらつきのある長い毛足を持っています。
対して現行8268は薄いベージュであり白く見えますね。毛足が短いため、部位によるばらつきが少なく全体的に均一な長さに仕上げています。
かつて長かったラフアウトの毛足が短くなったのは、ばらつきによって起きていたクレームが理由でした。
毛足を長くすると、革の部位や個体差によってどうしてもばらつきが発生するため、毛足を短く整えることでばらつきを減らしていました。
「ばらつきを減らせ!」と言われたかと思えば、今度は「以前の毛足の長いものが欲しい!」と言われるわけですから(笑)、レッドウィング社のファンサービスの旺盛さが伺えますね。
この”かすかに赤みがかった毛足の長いラフアウト”を再現するのに使われたのが、”タン・ブルハイド・ラフアウト”というレザー。
ブルハイドとは種付け用の雄牛の革を指しますが、ブーツのアッパーにブルハイドレザーが使われることはほとんどないため、非常に珍しいレザーチョイスとなっています。
ブルハイドは厚みがあり、丈夫な繊維を持つため、毛足の長いバサバサとしたラフアウトを作るのには最適でした。
厚みを活かして毛足を長く取り、ガッシリした繊維が豪快なラフアウトを作ります。
復刻版である9269にも個体差や左右差が存在します。
ものによって毛足の長さが異なったり、左右・パネル毎でも長さが異なったりします。
僕の所有する9269は左足の方が毛足が長くなっています。
個体差があるという点で言えば、実際の商品を確認できるお店で購入することをおすすめします。
おすすめは断然、より毛足の長い個体。長すぎるくらいでも良いと思いますよ。
プレス式バックル
1990年代のプレス製法も再現されています。
細部まで当時を再現してくれるのはありがたいですね。
地味ながらも復刻を語る上では欠かせないポイントです。
ヒートプリント刻印
現行仕様のエンジニアはタグに商品情報(品番、ワイズ、サイズ等)を記載していますが、
復刻版の9269はヒートプリントによる刻印で記載をしています。
見えない所までしっかり当時を再現しています。
タンブルハイドラフアウトの迫力ある経年変化
これだけカッコイイとジーンズに合わせてガシガシ履きたくなりますね。
特徴あるレザーだけに、履き込んだときの経年変化(エイジング)も唯一無二。
色がさらに濃くなり、長い毛足はラフさを増していきます。
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きれいな経年変化を目指す上でのポイントがあります。
それは濃い色のジーンズを避けることと、防水スプレーによるケアをちゃんと行うこと。
ジーンズの色が濃いと、ベージュのラフアウトにインディゴが移ってしまいます。
シャフト部分がところどころ青黒くなってしまうため、僕はおすすめしていません。
合わせるときは色移りしないボトムスを履くと良いでしょう。
(後述の「低ベルトを色落ちジーンズの裾から見せて履くのが流儀!」をご覧ください。)
また、ベージュのラフアアウトは必ず汚れてきます。
新品時のまま維持することはできませんので、汚れも味として捉えましょう。
ただし、防水スプレーを振って汚れが付きにくくするケアはお忘れなく。
スプレーしておくことでドロドロになることを防ぎながら、経年変化を進めることができます。
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低ベルトを色落ちジーンズの裾から見せて履くのが流儀!
低ベルト仕様は元々、日本のファッションショップが「ジーンズを履いたときに裾からベルトが見えるよう、ベルト位置を低くしてほしい!」と依頼して誕生したディテール。
ならばベルトをジーンズの裾から見せて履くのが流儀でしょう。
僕がおすすめするボトムスは色落ちした薄色のジーンズ。
先述したように色移りを防ぐという理由もありますが、ベージュのラフアウト×色落ちジーンズは相性抜群です。
色相環で補色関係にある2色ですので、コントラストがくっきりと出ます。
また、明るい色同士の組み合わせで、重くなりがちなアメカジコーデを軽やかに演出してくれます。
ちなみに今回履いたのはA.P.C.プチニュースタンダードのブリーチタイプ。
こちらも記事を書いていますのでぜひご覧ください。
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発売からわずか2年で廃盤になった貴重なモデル
9269は2018年に発売し、2020年に廃盤になりました。
なので販売期間はわずか2年ほど。玉数が少ない貴重なモデルです。
2018年にはストーブパイプシリーズとして、9268(クロンダイク)、2966(ノンスチール/クロンダイク)、9269(ブルハイドラフアウト)という3モデルが展開されていました。
2966が廃盤になった後、9269が廃盤になり、最後まで残った9268も廃盤に。
今後レッドウィング・ジャパンに、こういった”ヴィンテージ復刻モデル”の開発を期待することは野暮かもしれません。
しかし、復刻モデルもまだまだやり尽くしたとは言えないはずなので、今後の展開にぜひ期待をしたいところ。
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9269を中古で買うときのおすすめサイト3選
先述したように、9269はわずか2年間しか販売されておらず、非常に玉数が少ないモデルと言えます。
実際に中古市場に出回る数もコラボモデル並みに少なく、僕も状態の良いマイサイズを探すのには苦労しました。
そこで、中古サイトの中でも9269の出品数が多いサイトを3つあげました。
- HOPESMORE(ホープスモア)
- メルカリ
- ヤフオク
ホープスモアはアメカジ雑誌のLightningでも度々掲載されているユーズドブーツショップですね。
店舗住所は東京都世田谷区ですが、公式サイト・メルカリShop・ヤフオクもされているので、東京にお住まいの方でなくてもネットで購入ができます。
僕自身、2024年10月27日にホープスモアで9269を購入しています。
珍しい品番のブーツでも取り扱いがありますので、こういったレアなモデルを探すならホープスモアは外せません。
また極まれにデッドストックが見つかることもありますので、9269を狙うなら要チェックですね。
選ぶサイズは実寸通りのジャストサイズで問題ありません。
エンジニアブーツはDワイズですが横幅に余裕があります。足幅が広い人でも履きやすいです。
レッドウィングのブーツのサイズ選びについては下の記事で解説しています。興味のある方はご覧ください。
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まとめ
本記事が9269が気になっている方の参考になったら幸いです。
- レッドウィング9269は日本で発売された1990年代当時の8268を復刻したモデル。
- ストーブパイプ、低ベルト、赤みがかった毛足の長いラフアウトなど、時代とともに失われていった特徴を再現している。
- タンブルハイドラフアウトの経年変化は唯一無二。履き込むと本物のヴィンテージのよう。
- 低ベルトを色落ちジーンズの裾から見せて履くのが流儀。ベージュ×ライトブルーがアメカジスタイルを軽やかに演出してくれる。
- 販売期間はわずか2年ほど。中古市場に出回る数も少ないが、ホープスモア、メルカリ、ヤフオクは比較的出品が多く見られる。
今後もっと入手が困難になるであろう一足です。
9269を探していて、運よく良いものを見つけられたらぜひ購入をしましょう。
色落ちジーンズと合わせて楽しいブーツライフを!