読者の知りたいこと

レッドウィング創業110周年を記念して2015年に発売された”ハンツマン”。
”狩人”という名前の通り、ハンティングブーツをモチーフとしてデザインされていますが、
現行の877やアイリッシュセッターとは、ところどころに異なる特徴が見られます。
本記事ではそんな特別なモデルである”ハンツマン”について、レッドウィングの大ファンである僕が、実際の写真を使って詳しく解説をしていきます。
ハンツマンの概要
まず最初に、レッドウィング2015”ハンツマン”とはどんなブーツなのか、その概要を解説していきます。
レッドウィング社の創業110周年記念モデル
レッドウィング社は2015年で創業110周年を迎えました。
レッドウィング社が創業したのは1905年。
アメリカのレッドウィングという街で、チャールズ・ベックマンが仲間と共に「Red Wing Shoe Company」という工場を設立。
労働者の足元を支える本格的な靴作りが市場に受け入れられ、後に世界的なワークブーツブランドへと成長しました。
110周年を祝うモデルではありますが、日本のみでの発売でした。
ハンツマンが日本を主力市場とする”ヘリテージライン”に属することや、当時ブラック・クロンダイクレザーを使ったモデルが、日本以外で展開されていなかったことが理由です。
発売当時の価格は¥59,400(税込)であり、10年前ということを考えると高価格帯であったことが分かります。
まさに日本市場を意識した価格設定ですね。
1930年代のハンティングブーツ668がモチーフ
ハンティングブーツといえば、名作と名高い”877 8インチクラシックモック”を思い浮かべる人も多いでしょう。
実はこのハンツマン、現代の877のベースとなった1930年代のハンティングブーツ”668”をモチーフに作られています。
レッドウィングのハンティングブーツは1936年の668に始まり、686、951、952、252、954、854を経て、1952年から現代まで続く877に行き着きます。
つまりハンツマンのデザインソースである668は、現代の877の”先祖”のような存在です。
そんな668をはじめとする1930年代のハンティングブーツには、現代の877に見られるような「ラップ・アラウンド・ヴァンプ」(一直線の縫い目)や、静音性の高い「トラクショントレッドソール」といった特徴はありませんでした。
そして、その当時のハンティングブーツである”668”を再現しようという取り組みのもと製作されたのが、この”2015 ハンツマン”です。
668の特徴を見事に再現した復刻モデルでありながら、現代のエッセンスも取り入れているのがハンツマンの特徴。
ヴァンプ(甲とつま先を覆う部分)とウォーター(サイドからかかと周りを覆う部品)を縫い付けるステッチが、甲からした方向に曲がっている点や、ヒール付きのアウトソールなど、668が持っていた特徴を忠実に再現。
加えてブラック・クロンダイクレザーやグロコード・メダリオン・ソールといった現行のヴィンテージパーツを取り入れることで、「旧いブーツのようで、どこか新しい」ブーツが完成しました。
ハンツマンのディテール
ハンツマンは旧いハンティングブーツをモチーフとした復刻モデルなので、現行のレッドウィングのブーツには見られない一風変わった特徴をいくつも有しています。
こだわりのヴィンテージディティールが搭載された、通好みの渋いブーツ...。そんなハンツマンの特徴を8つ紹介していきます。
8インチレースアップブーツ
”877”を彷彿とさせる8インチのレースアップシルエットが特徴の1つ。
ヴィンテージの”668”に近づけるために、シューレースがレザーになっています。
一応ナイロンレースも付属していますが、おすすめは圧倒的にレザー。
茶芯のブラッククロンダイクレザーにブラウンのレザーシューレースがマッチします。
難点をあげるとすれば着脱が面倒なことですかね。
スピードフックでないため、着脱の度にシューレースを緩める必要があります。
細身のモックトゥ
”877”の祖先というだけあって、つま先はモックトゥ仕様になっています。
”877”との違いは、モックトゥ及びラストがやや細身であること。
実はこのハンツマン、スーパーソールと同じ326番ラストを使用しています。
「モックトゥだけど、どこかシャープ」なシルエットという、絶妙なバランス感が魅力です。
面白いことにEワイズとDワイズの2種類のワイズが存在します。
Eワイズであればスーパーソールでサイズ感を確かめることができますので、最寄りの直営店もしくは正規取扱店で試着をしてみると良いでしょう。
アイリッシュセッターで試着してもサイズ感をきちんと測ることができませんのでご注意ください。
下の写真はアイリッシュセッターEワイズとハンツマンEワイズを比較したものですが、同じモックトゥでも着用感が全く異なります。
詳しくは下の記事でサイズ感について言及していますので、気になる方はぜひご覧ください。
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レッドウィングのサイズ選びは実寸を基準に!スニーカーとの比較を徹底解説
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ヴァンプとクォーターのステッチ
”877”はヴァンプとクォーターを縫い付けるステッチが、甲の高さのまま一直線に設けられた「ラップ・アラウンド・ヴァンプ」を採用しています。
wrap around(ラップ・アラウンド)とは”包み込む”という意味。
浸水を防ぎ、足当たりを良くするためのディテールで、ハンティングブーツの進化の歴史の中で生まれた仕様でした。
ハンツマンでは進化前の旧ディテールを復刻し、ステッチを甲から下方向に曲げて縫い付けています。
ここだけでも”877”と”ハンツマン”の違いがはっきり分かりますね。
- 877の「ラップ・アラウンド・ヴァンプ」
- 2015のヴァンプ
ラスラーレザーのガセットタン
ガセット・タンとは、ブーツ上部まで切れ目が入ってない袋状のタンのことを指します。
タンの脇から泥や水が浸入してくることを防ぐ目的で作られています。
このガセット・タンに使われているのが”ラスラーレザー”です。
内側が黒く、柔らかいレザーであり、柔軟さが求められるタンの素材に適しています。
茶芯のブラッククロンダイクレザー
レザーはレッドウィングが誇る大人気の茶芯レザー”ブラック・クロンダイク”。
2025年現在では”9060 ベックマンフラットボックス”のイメージが強いかもしれませんが、元々はエンジニアブーツやアイリッシュセッター、ロガーブーツなどにも使われていました。
履いているうちにスレた箇所が茶色くなっていく、独特のエイジング(経年変化)が魅力です。
この茶芯仕様はブーツ愛好家にも好まれやすいため、レッドウィングの中でも特に人気が高いレザーと言えます。
シャフトの「RED WING」刻印
1980年代までみられたディテールを復刻しています。
同様の仕様が、同じブラッククロンダイクレザーを使った復刻モデルである”9874”や”9268”にも見られます。
内側の商品情報スタンプ
品番・サイズ・ワイズといった商品情報を内側にスタンプで印字しています。
これもヴィンテージディテールの1つで、同じ復刻モデルである”9268”や”9269”にも同様の特徴が見られます。
ちなみにここでEワイズなのかDワイズなのかを判別することができます。(外箱でも判別可能)
ハンツマンを入手するときは中古での購入になるため、ワイズをしっかりと確認しておくようにしましょう。
グロコードメダリオンソール
ドレッシーかつヴィンテージ感のある”グロコード・メダリオン・ソール”を採用。
ビブラムソールのようにゴツゴツしておらず、ヒールがあるため、
ドレスライクなミルワンやヴィンテージライクなベックマンフラットボックスなど、綺麗めで旧い印象のブーツによく用いられています。
ハンツマンにこのソールを使ったのはナイスなチョイスと言えるでしょう。
全体の印象がデザインソースである”668”にグッと近づきます。
ハンツマンのエイジング(経年変化)
僕はハンツマンを2足持っているため、両方のエイジング(経年変化)写真をお見せします。
まず比較的キレイな方から。
スレやすい箇所(つま先、かかと)やテンションのかかりやすい箇所(シャフト)には茶芯が出ています。
ハンツマンのようなヴィンテージデザインのブーツは茶芯と好相性ですね。
履き込むほどに味わいが増し、カッコいいブーツに育っていきます。
もう1足はかなりダメージが大きい個体。
僕のもとに届いたときから革のふやけやひび割れが見られました。
雨の日に履いて水分を含んでいるかのような状態です。
エイジングがワイルドすぎるため、サバゲー用などにして、スポーツシューズのように履いていこうと思います。
カッコいいエイジングをさせるためには手入れが欠かせません。
当ブログでは、ブラック・クロンダイクの手入れの記事も書いていますので、気になる方はぜひこちらもご覧になってください。
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ブラッククロンダイクの手入れの間違いを指摘!/正しいやり方を教えます!
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ハンツマンのナイフポケットカスタム
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レッドウィング・ジャパン元代表の鈴木理也さんが、ご自身のInstagramにてハンツマンのカスタムを披露されています。
ナイフポケットを付けてビリーブーツ風にカスタムされています。
ビリーブーツの復刻といえば”8829”ですが、どちらかといえばハンツマンの方が本家ビリーブーツに近いという意見がありました。
ナイフポケットを付ければより本家に近づくことが証明されましたね。
おすすめのカスタムなので、ハンツマンをお持ちの方はぜひこのカスタムを取り入れてみてください。
ハンツマンはブラックサイン”モールスキン・シェリフ・ブリーチーズ”と相性抜群
ハンツマンのコーディネイトを語る上で欠かせないアイテムがあります。
それは知る人ぞ知る、BLACK SIGN(ブラックサイン)の”Moleskin Sheriff Breeches(モールスキン・シェリフ・ブリーチース)”です。
公人(保安官)のユニフォーム、乗馬、モーターサイクルなど、幅広いジャンルで活躍したブリーチースがデザインソース。
1940年代のディテールを再現したボトムスであり、1936年に誕生したレッドウィングの”668”とは時期も近いことになります。
モールスキン・シェリフ・ブリーチース×ハンツマンの組み合わせの真骨頂はレースを見せるブーツインスタイル。
ブーツのシューレースとボトムスのレースが馴染み、まるでセットアップかのような調和を生み出します。
モールスキン・シェリフ・ブリーチースはECサイトでも購入できます。
ハンツマンをお持ちの方は、持っておくべき一着ですね。ぜひ!
限定発売だったため現在は廃盤。購入は中古ディーラーや中古サイトで!
ハンツマンが発売されたのは2015年。
レッドウィング創業110周年を記念して発売されたモデルであったため、当然現在は生産終了・廃盤品です。
しかし玉数はそれなりにあったため、発売から10年が経過した現在でも、中古市場で盛んに取引が行われています。
おすすめの中古ディーラー及び中古サイトは以下の3つです。
- HOPESMORE(ホープスモア)
- メルカリ
- ヤフオク
ホープスモアはアメカジ雑誌のLightningでも度々掲載されているユーズドブーツショップですね。
店舗住所は東京都世田谷区ですが、公式サイト・メルカリShop・ヤフオクもされているので、東京にお住まいの方でなくてもネットで購入ができます。
生産終了モデルのブーツでも取り扱いがありますので、ハンツマンを探すならホープスモアは外せません。
稀ににデッドストックが見つかることもありますので、狙っている方は要チェックですね。
ちなみに僕が購入した先はメルカリとセカンドストリートでした。
上にあげた3つ以外にも色々なサイトを調べてみると良いでしょう。
Eワイズの場合は、実寸通りのサイズのものを選べば問題ありません。
先述したように、スーパーソールと同じ326番ラストを使用していますので、最寄りの直営店や正規取扱店で試着をしてみると良いでしょう。
Dワイズの場合は参考にできるブーツがありませんので、現物を試着することをオススメします。
ただし、ハンツマンは生産終了モデルなので、お店にいくつものサイズを置いていることは稀です。
比較的フィット感が近いDワイズのアイリッシュセッターやスーパーソールを事前に試着して、ある程度目安を決めておくと良いです。
レッドウィングのブーツのサイズ選びについては下の記事で解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。
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レッドウィングのサイズ選びは実寸を基準に!スニーカーとの比較を徹底解説
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まとめ
本記事をまとめます。
- レッドウィング2015”ハンツマン”は、同社の創業110周年記念モデルとして2015年に発売された。
- 1930年代のハンティングブーツ”668”がモチーフであり、現在の”877”の祖先を復刻したような存在である。
- 外観を”668”に近づけるよう、特別に復刻されたヴィンテージディテールが見られるほか、ブラッククロンダイクレザーやグロコードメダリオンソールなどの、現行のヴィンテージ系パーツも使用されている。
- 僕の所有するエイジングサンプルをお見せした。スレやすい箇所やテンションのかかる箇所に茶芯が出やすい。
- カスタムするならナイフポケットを取り付けてビリーブーツ風にするのがおすすめ。
- ハンツマンはブラックサイン”モールスキン・シェリフ・ブリーチーズ”と相性抜群。レースセットアップや1930〜40年代セットアップといった合わせ方が可能。
- 既に生産終了・廃盤。購入する際はホープスモア、メルカリ、ヤフオクで探すと良い。
本記事がハンツマンを気になっている方の参考になったのであれば幸いです。
レッドウィングの中でも特別な限定発売モデルということもあり、発売から10年が経過した今でも、非常に人気が高いモデルとなっています。
生産自体は終了していますので、購入手段が限られますが、見つけたらチャンス!
ぜひ購入をして、その魅力をその目で確かめてみてください!