読者の知りたいこと
レッドウィング随一の人気を誇るベックマンフラットボックス。
これから購入を考えている方は、その人気の秘訣や他のブーツにない魅力を知っておきたいですよね。
本記事ではレッドウィングの大ファンであり、ベックマンフラットボックスを実際に所有している私が徹底解説します。
レッドウィング9060 ベックマンフラットボックスの特徴をまとめてみました。
ベックマンフラットボックスとはどんなブーツなのか。その特徴をまとめて解説します。
ヴィンテージを踏襲した先芯なしのベックマン
2017秋に発売。
レッドウィングの人気モデル「ベックマン」の名を冠しています(創業者チャールズベックマンの名でもある)が、実のところは全くの別物です。
ベックマンフラットボックスは、つま先に先芯を入れない「フラットボックス」仕様のベックマンです。
自動車がまだ普及しておらず道路の舗装が未発達であった旧い時代。
そんな時代に履かれていたヴィンテージのブーツをデザインソースとしています。
道端の土埃や泥から足を守るための6インチ丈。
普段靴用に履きやすさ、歩きやすさを追求した先芯なし仕様。
こういった数々のヴィンテージの意匠を取り込んだブーツがベックマンフラットボックスなのです。
茶芯レザー「ブラッククロンダイク」を採用
9060には茶芯レザー「ブラッククロンダイク」が使われており、すれた箇所から茶芯がのぞいてきます。これも人気の理由です。
茶芯とは?
茶色い革の表面を黒く染色した革を「茶芯」と言います。
茶芯はヴィンテージのレザーアイテムによく見られる特徴です。元々茶芯とは生産性の合理化のためになされていたもので、一旦すべての製品の革を茶色で作り、黒い製品を作るときはその上を黒く染色する手法です。
茶芯のレザーは使い込むほどに表面の黒い部分が擦れて地の茶色が浮き出してきます。この黒と茶色のコントラストが美しい経年変化をもたらすのです。
レッドウィングのブラックレザーも1990年代までは茶芯の個体が存在していました。しかし現行のブラックレザーは茶芯仕様ではなく、革の芯まで黒い「芯通し」と呼ばれるものです。
茶芯の復活を望む声は多かったものの、当時使われていた表面の黒い塗膜は有機溶剤系塗料であり、現在の環境基準では使用できません。開発にあたり度重なるサンプルを経て、水性塗料でも強力な塗膜を作れるようになり、ようやく当時の雰囲気を再現することに成功しました。それがレッドウィングの茶芯レザー「ブラック・クロンダイク」なのです。
ベックマンフラットボックスは「フラットボックス仕様×茶芯レザー」と、ヴィンテージの要素が満載なモデルというわけですね。
独特のエイジング(経年変化)
歩いているうちにブーツにはシワが入りますが、先芯のないフラットボックスではつま先部分にまでシワが入ります。
このシワによって徐々につま先が低くつぶれ、上に反り上がるという、独特のエイジング(経年変化)がフラットボックスの魅力です。
レッドウィングジャパン人気No.1モデル
レッドウィング直営店、正規取扱店に聞いても、今最も人気があるのがこのベックマンフラットボックス。
入荷しても必ず売り切れるほどの需要を誇っています。
後述しますが、過去には生産停止により、まったく入荷しない時期がありました。
2023年冬現在は入荷間隔が短く、注文したら比較的すぐに入荷されるので、安定して買える状況です。
まったく買えない時期があった!?フラットボックスの歴史を解説!
実はベックマンフラットボックスには、まったく買えない時期が存在しました。
注文しても入荷予定が一向に立たず、1年に1度入荷があるかも分からないという時期が2年くらい続いたのです。
2023年冬現在は継続的に入荷があり、注文すれば比較的すぐに手に入ります。良い時代になりましたね。
ここでは、ベックマンフラットボックスの開発構想〜現在までの歴史を時系列で紹介していきます。
【ヴィンテージ時代】トゥの先芯を省いた6インチブーツが存在した
旧い時代の6インチブーツの中には、時折つま先の先芯を省いたモデルが出てくることがあります。
自動車がまだ普及しておらず道路の舗装が未発達であった時代には、道端の土埃や泥から足を守ることができる6インチ丈のブーツは、日常的に履かれる普段靴でした。
普段靴なので履きやすく、歩きやすくするために、先芯を入れていないのです。
後にレッドウィングジャパンの代表取締役となる鈴木理也氏はその先芯なしのブーツに惹かれ、どうにか形にできないか模索を始めます。
【2012年~2017年】企画開発
鈴木理也社長時代の2012年、ついにサンプルが完成します。
実に5年以上の月日をかけたプロジェクトであり、鈴木氏自身も非常に思い入れのあるモデルと語っています。
【2017年9月】3種のレザー展開で発売!大きな話題に!
2017年9月、満を持して発売されたのが今のベックマンフラットボックス。
発売時は3モデルでの展開でした。
- ブラッククロンダイク(9060)
- ブラックチェリーフェザーストーン(9062)
- チークフェザーストーン(9063)
今日はレッドウィング 9062 ベックマン フラットボックスで外出しました! pic.twitter.com/mR9Fc0j5xz
— レッドウィング大好きマン (@redwing_fashion) August 23, 2022
ベックマン フラットボックス #9063
カスタムした、とは言えませんがウエルトをほんの少し削っています。つまりコバの張り出しを抑えています。
そうするとラストの形がハッキリして、このラストがやや内振りなのが外見に現れて•••。わずかな違いで見え方が変わるんでんすね! pic.twitter.com/wvjjFwzSal— michiya (@michiya186) November 29, 2019
社内外で期待されて発売されただけあって、レザー展開がとても豪華です。
茶芯仕様で話題の最中にいた「ブラッククロンダイク」をはじめ、通常のベックマンにも採用されている上質な革「フェザーストーン」。
この中で最も人気があったのが、ブラッククロンダイクの9060です。
【2018年】9062と9063が廃盤に
発売後1年でラインナップに変化が起きます。
ブラックチェリーフェザーストーン(9062)とチークフェザーストーン(9063)が廃盤に。レザー展開はブラッククロンダイクの1種類のみとなりました。
9062と9063は生産期間が非常に短く希少です。中古市場でもめったに見かけない幻のフラットボックスと化しました。
【2019年~2021年】まったく買えない時期が到来
2019年ごろ、市場に変化が起き始めます。
ベックマンフラットボックスが慢性的な欠品状態に陥ったのです。
これが約3年続きました。
理由は以下の2つだと言われています。
- コロナ禍で工場の稼働が抑えられたこと。
- アメリカ工場の熟練スタッフが大量離職したこと。
2019年に人々の移動が制限され、世界中の企業が経済活動を自粛し始めました。
レッドウィングも例外ではなく、アメリカ工場の稼働に制限をかけます。
この間に生産されるのは世界共通モデルがほとんど。
日本企画として販売しているフラットボックスにはなかなか生産順が回ってきませんでした。
また、2020年頃からアメリカ工場のスタッフが大量に離職し始めたと言われています。
詳細は不明ですが、スタッフと会社の間でトラブルがあったと想定されます。
熟練スタッフの離職はブーツの生産にも大きく影響します。
プレーントゥタイプのブーツは製造に高い技術力を要しますが、それに対応できるスタッフがたくさん辞めていったことで、プレーントゥタイプの生産が困難な状況に。
プレーントゥに含まれるフラットボックスもこの影響を受けていたと考えられます。
一方で、この時期に持っていた人はまさに勝ち組。
YouTubeでフラットボックスの動画を上げれば瞬く間に注目を集めました。
この時期に人気になった人としては、うなさんがあげられるのではないでしょうか?
レッドウィング直営店とのコラボ記事を書いていますので、ぜひご覧ください。
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うなさん(革靴小説うなブロ)の私物がレッドウィング福岡パルコ店に展示中!圧巻のエイジングを見逃すな!
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【2022年】生産が復活!その後安定供給体制へ
RED WING 9060
ベックマン フラットボックスUS6.5〜US10 入荷しました。#redwing#フラットボックス#入荷情報 pic.twitter.com/CuVwyVC2kg
— mPLAN (@mplanbox) November 6, 2022
上述した買えない時期を乗り越え、2022年からついに生産が復活します。
復活当初は供給がやや不安定で、売り切れた後すぐには再入荷されない状況でしたが、2023年からは供給が安定しています。
今では注文したら1〜2週間で入荷されるほど。3年間も手に入らなかった時期から考えると夢のようですね。
履くと痛い!?適切なサイズ感を解説!
ベックマンフラットボックスのサイズでよく話題になるのが「つま先が痛い」です。
先芯がなく、つま先に沿うように低くつぶれる仕様のため、ブーツにシワが入ると革が足を噛んで痛みを感じてしまうことも少なくありません。
これは多くの場合サイズ選びによって防ぐことができます。
また、フラットボックスを履くなら経年変化によるつま先のつぶれや反り上がりを楽しみたいもの。
カッコイイ経年変化をさせるためにもサイズ感は重要になってきます。
私は足の実寸が25.5cmであり、レッドウィングのブーツは大体US7.5(25.5cm)かUS7(25cm)で買っています。
しかし、このベックマンフラットボックスは実寸よりハーフサイズ大きいUS8(26cm)を選びました。
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レッドウィングのサイズ選びは実寸を基準に!スニーカーとの比較を徹底解説
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下の写真をご覧ください。
実寸サイズのUS7.5(25.5cm)の場合、全体的に革が張っていることが見てとれると思います。
フラットボックスは8番ラストを使われており、アイアンレンジャーや通常のベックマンと同じ木型です。
しかし、先芯がない分つま先がやや窮屈であり、実寸サイズではつま先の革が足に密着しすぎて痛みを感じました。
また、ここまで革が張っていると、つま先がきれいにつぶれず、カッコイイ経年変化を期待できないと考えました。
そこで選んだのが実寸よりもハーフサイズ大きいUS8(26cm)。
結果はこれがベストでした。
革が極端に張ることなく、つま先がつぶれるだけの十分な余裕を確保。
かかと周りが緩いのではないかと心配でしたが、歩行にも全然問題ありませんでした。
また、サイズを大きくすると経年変化がダイナミックになるというメリットがあります。
つま先の「つぶれジワ」が増えることで、変化を存分に堪能できます。
下の記事で大きめサイズを選んだときの経年変化を見ることができます。ぜひご覧ください。
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コーデ例3選!カジュアルにもスーツにも合わせられる!
ベックマンはレッドウィングブーツの中では「クラシックドレスライン」に位置します。
そのキレイめにも通じる装いは、カジュアルシーンのみならず、スーツやジャケパンを着用するビジネスシーン、オフィスカジュアルシーンにも対応可能です。(ただし職場や業界によります)
まず最初にメンズのオフィスカジュアルに合わせたコーデ。
私は個人事業主なので、ここまでカジュアルな装いでも許されるシーンが多々あります。(研修会など)
カーキジャケット×ブーツと、一見かなりカジュアルですが、アースカラー(カーキ、茶芯のブラウン)×ブラックなので案外シンプルですよ。
ベックマンフラットボックスはどこか「ブラウン」の風味を持っており、その特性を活かした色合わせですね。
次にほぼスーツなコーデ。
足元だけブーツですがクラシックドレスラインに位置するだけあり、違和感はありません。
個人的にはこの格好で仕事に行くことが多いです。
同じクラシックドレスラインのポストマンもスーツスタイルによく合います。こちらも参考にご覧ください。
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もちろんカジュアルなファッションにも合います。
アメカジウェアの代表格ライダースジャケットと合わせました。
一気にバイカー感が高まりますね。
schott×REDWINGは元々親和性が高いため、はずれがないですね。
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【画像解説】エイジング(経年変化)を3段階でお見せします
ベックマンフラットボックスの醍醐味はなんといってもエイジング(経年変化)です。
具体的にはつま先のつぶれ、つま先の反り上がり、茶芯があげられます。
ここでは段階的な変化の過程を画像付きで解説します。
【新品時】ふっくらしたフォルムで黒々としている
まずは新品時です。
つま先はふっくらとしており、全体的に黒々としています。
フラットボックス、茶芯といった特徴はまだ見られません。
【1年程度】つま先が平たくなってきた!茶芯はまだ出ていない
1年程度履くとつま先にシワが入り、平たくなってきます。
だんだんフラットボックスという名前に近づいてきました。
茶芯はまだ出ていません。
【3年以上】つま先が沈んで上に反り上がり、茶芯が出ている
3年以上履くとつま先が完全につぶれます。
つま先やタンに茶芯が見られ、クロンダイクレザーの特徴も活きてきます。
茶芯が出てきたらクリームで手入れをしましょう。
茶芯が出るまではこれといって手入れは必要ありません。むしろすることで革に良くない影響を与えるリスクもあります。
詳しくは下の記事で解説していますのでご覧ください。
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廃盤になる可能性について
やっと供給が安定してきたベックマンフラットボックスですが、廃盤になる可能性があるのか心配されている方も多いと思います。
結論を言うと、今はまだ廃盤の流れはありません。
2024年秋現在、廃盤の動きはない
すぐに廃盤になることはないです。
直営店のスタッフに伺ったところ、レッドウィングジャパンが廃盤になるのを防いでいるとのこと。
レッドウィングジャパンでは稼ぎ頭であり、圧倒的な回転率を誇るため、作れば売れる状況が続いています。
まだまだ廃盤にしたくないというのが本音でしょう。
日本企画モデルは今後廃盤になっていく傾向
それでも日本企画モデルの廃盤化の流れは無視できません。
近年日本で長年愛されてきたモデルの廃盤が立て続けに起きており、日本企画モデルの1つであるベックマンフラットボックスも危ういのではないかと危惧する声があがっています。
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そしてそういったモデルの中でも異質な特徴を持つモデルは廃盤が近い傾向にあります。
ノンスチールトゥ、クロンダイクレザーという、フラットボックスと似た仕様を持つ2966がその例です。
他にも廃盤になった9269はレッドウィング全モデルの中でも特徴的なディテールを持っていました。
こういったこだわりが詰まったモデルたちは、長年日本で人気モデルとされてきた背景があり、1990年代前後の渋カジ全盛期を支えた立役者でした。
そのレジェンドモデルたちがラインナップから消えてしまうのは、どこか寂しい感じがしますね。
何が言いたいのかというと、買うなら今!!!ということです。
まとめ
本記事をまとめます。
- ベックマンフラットボックスは「先芯なし」、「茶芯」という特徴を持ち、独特の経年変化が人気を博しているモデルである。
- まったく買えない時期があったが、2023年冬現在は供給が安定している。
- 私は実寸+ハーフサイズアップを選択。痛くならず、経年変化もきれいに出る。
- 3年以上履くとつま先がつぶれて、反り上がり、革には茶芯が出てくる。
- 2023年冬現在、廃盤の話は出ていない。しかし日本企画品番廃盤化の流れを見ると、今のうちに買うことをオススメする。
レッドウィングで今最も勢いのあるモデルであるベックマンフラットボックス。
本記事でその魅力が伝わったら幸いです。
現在廃盤の情報は出ていないものの、日本企画品番の今後を考えるとやや危うい立場にあると言えます。
絶対欲しい!という方は、ぜひ今のうちに購入を検討してみてください。