読者の知りたいこと

レッドウィング社は2025年に創業120周年を迎えました。
そこで話題に上がっていたのが120周年記念モデルの存在。
前回の110周年記念モデル”ハンツマン”が好評だったため、今回の120周年記念モデルにも期待が集まっていました。
そして2025年10月1日、満を持して登場したのがエンジニア、ロガー、ペコスの計4モデル。
本記事ではこれらのブーツの特徴を紹介するとともに、120周年記念に込められた想いについて、徹底解説していきます。
レッドウィング社は2025年に創業120周年を迎えた
レッドウィング社は2025年に創業120周年を迎えました。
レッドウィング社の創業は1905年。
アメリカのレッドウィングという街で、チャールズ・ベックマンが仲間と共に「Red Wing Shoe Company」という工場を設立。
労働者の足元を支える本格的な靴作りが市場に受け入れられ、後に世界的なワークブーツブランドへと成長しました。
レッドウィングは10年ごとに記念モデルを発売しており、ファンの間では”10年に一度の特別なイベント”として知られています。
120周年記念モデルのテーマは1930〜50年代の名品復刻
120周年記念モデルのテーマは1930〜50年代の名品の復刻です。
それぞれの年代に対応するブーツは以下の通り。
前回のハンツマンに続き、ヴィンテージ路線で企画がなされました。
近年はヘリテージ寄りのモデルが次々と廃盤になっていたため、今回の展開は非常にうれしく思います。
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日本だけでなくアメリカやヨーロッパでも発売されており、世界的にも「待ってました!」の声が多数寄せられています。
日本ではエンジニアブーツを待ち望んでいる人が多かったのですが、ヨーロッパではロガーブーツが人気のよう。
2025年はここ最近で一番の盛り上がりを見せた年になりましたね。
さて、さっそくですが120周年記念モデルとして発売された4種類について、実際の写真をお見せしながら詳しく解説していきます。
ノンスチールトゥ・ストーブパイプ・茶芯エンジニアブーツ2966(1930年代の名品)
2966は2016年に発売され、2020年に一度廃盤となっていたモデルです。
惜しまれつつも廃盤となったモデルでしたが、今回の120周年記念で復活を遂げました。
2966はレッドウィングエンジニアの中でもNo.1の個性派
2966はレッドウィングのエンジニアブーツの中でも、一際変わったディテールを持つモデルです。
まず注目してほしいのが茶芯のブラック・クロンダイクレザー。
レッドウィングのブラックレザーには1990年代まで茶芯の個体が存在していました。
当時の茶芯レザーを熱望する声を受けて開発されたのが、この復刻レザー”ブラック・クロンダイク”です。
そしてシルエットにも注目。
2966はストーブパイプ(STOVEPIPE)と呼ばれる、ヴィンテージ仕様の細いシャフト(履き口)を持っています。
このディテールは1990年代まで存在しました。
クラシックな雰囲気を放つストーブパイプもまた、ヴィンテージファンからの高い評価を受けています。
そして2966が持つ唯一無二の特徴は、つま先に鉄芯ではなく樹脂製の先芯を用いた、ノンスチールトゥ仕様です。
樹脂製の先芯は鉄芯と違い、履いていくと若干沈んでくるため、フラットボックスに近い経年変化が楽しめます。
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また、足当たりも柔らかいため、エンジニアブーツ特有の鉄芯が嫌だという方にもおすすめです。
ちなみに兄弟品番として、2014年に発売された”9268”というモデルも存在します。
2966との違いは先芯のみで、9268には伝統的なスチールトゥ(鉄芯)が使われています。
9268は現在も廃盤のままですが、今回の2966の復活により、今後再登場する可能性が高まったと言えます。
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2966のサイズ選び
2966には50番ラストと呼ばれる木型が使われています。
Dワイズですが横幅が広く、足幅が広い人にもフィットしやすい形をしています。
僕は基本的には実寸サイズを選ぶことを推奨しています。
レッドウィングのサイズ選びについて解説した記事も書いていますので、気になる方はぜひご覧ください。
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ただネックになりやすいのが甲とシャフト。
実寸サイズで選んでいただきたいところですが、履いているうちに甲が痛くなってしまう方もいらっしゃいます。
また、ストーブパイプシルエットなのでシャフトが細く、実寸サイズで選んでしまうと足が入らないという方もいらっしゃいます。
そんなときに役に立つのがブーツストレッチャーとエンジニアブーツ用着脱アイテム。
それぞれ下の記事で解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。
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エンジニアブーツの歴史
せっかくなので1930年代の名品”エンジニアブーツ”の歴史も紹介します。
エンジニアブーツの起源は1930年代に遡ります。
19世紀半ばから終わり(1865年〜1890年)までの間、アメリカでは西部開拓が盛んに行われていました。
ほぼ同時期に蒸気機関車が実用化され、20世紀初頭にはアメリカ中に鉄道網が広がりました。
結果としてアメリカの国土は急速に拡大。
この時、アメリカの発展を支えたのが鉄道機関士(レイルロード・エンジニア)と呼ばれるワーカーです。
当時の彼らの仕事は過酷で危険を伴うものでした。
そうした厳しい環境から彼らの足を守るために開発されたのが、このエンジニアブーツというわけです。
レッドウィングのエンジニアブーツ”2268”は、鉄道機関士の仕事に最適な特徴を備えていました。
紐がなくひっかけや巻き込みによる事故を防ぐことができ、コード(繊維)を混ぜて作られたソールは油が散った地面でも滑ることがありません。
また、スチールトゥと呼ばれるつま先に入った鉄のカップはワーカーの足元を危険から守りました。
しかし、時代の流れとともにアメリカの作業靴市場が変化。
スチールトゥを必要としないエンジニアブーツユーザーが増えたことで、鉄芯の代わりに樹脂の先芯を備えた”968”が登場しました。
この968を復刻したのが”2966”です。
先芯が柔らかい樹脂製であるため、履き込むとつま先が若干沈む、独特の経年変化を見せてくれます。
また足当たりがソフトになるため、ファッション用途に適したディテールであるとも言えます。
今日では専らファッションアイテムとして履かれているエンジニアブーツ。
このノンスチールトゥ仕様は、エンジニアブーツにとって正当な進化の証なのです。
8インチ・ノンスチールトゥ・ロガーブーツ4501&4585(1940年代の名品)
ロガーブーツも廃盤になっていましたが、今回の120周年記念で復活しました。
ただ1つ注目して欲しいのは、以前までのロガーブーツとは異なる点。
以前のロガーブーツは9インチ丈のチールトゥ仕様でした。
しかし今回の”4501”と”4585”は8インチ丈のノンスチールトゥ仕様。
これが何を示すのか、次の項目で解説していきます。
8インチロガーは1961年のヴィンテージロガーの復刻モデル
今回の8インチ丈・ノンスチールトゥ・ロガーブーツは、1961年に登場した”899”をデザインソースとしています。
”899”は初めてビブラム社のソールを搭載したモデルであり、8インチ丈、ラウンドトゥといった特徴を有していました。
それを現代風に再構築したものが今回の”4501”と”4585”というわけですね。
今回のタイプのロガーブーツは、日本では初めての発売となります。
”4585”は以前ヨーロッパ限定品番として発売されていたもので、今回の120周年記念を機に復活を果たしました。
ヨーロッパ市場ではエンジニアブーツよりもロガーブーツの復活を支持する声が強く、今回の復活にも影響を与えています。
新たにブラックカラー”4501”が追加されたのも、ヨーロッパのレッドウィングユーザーに向けたファンサービスなのでしょう。
アウトソールには高い防滑性と柔らかさを兼ね備えたビブラム・TC4+ラグ・ソールを採用。
ストームウェルトも採用されており、水の侵入を防ぐことができます。
ただし革はオイル・スリックレザーというオイルドレザーのため、雨の日に適しているかといえば微妙なところ。
もしこれがラフアウトだったら、雨の日に超おすすめの1足でしたね。
8インチロガーのサイズ選び
レッドウィングの中でも定番の8番ラストが採用されています。
アイアンレンジャーやブラックスミスをお持ちの方であれば、それらと同じ基準で選ぶことができます。
8番ラストはDワイズでシャープな印象を持ちますが、つま先には余裕を持たせています。
したがって、ワイズの狭いブーツが苦手な人にも比較的合いやすい木型です。
僕は基本的には実寸サイズを選ぶことを推奨しています。
レッドウィングのサイズ選びについて解説した記事も書いていますので、気になる方はぜひご覧ください。
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ロガーブーツの歴史
せっかくなので1940年代の名品”ロガーブーツ”の歴史も紹介します。
ロガーブーツはロガー(木こり)のために開発されたブーツです。
彼らの仕事もまた過酷で危険を伴うものでした。
山奥でチェーンソーを使って巨木を切り出して製材し、大掛かりな重機で山から下ろすというのが彼らの仕事。
刃物や大きな丸太が常に周りにある危険な状況から足を守るブーツが必要でした。
そこで1940年代初めに開発されたのが、今日のロガーブーツのベースモデルとなるブーツでした。
ロガーブーツとして機能するためには、以下の特徴が必須でした。
ロガーブーツはこれらを合わせ持つヘビーデューティー極まる1足なのです。
街中で履くには明らかにオーバースペックですが(笑)
高ハイトでレースアップというTHEブーツの外観を体現しているため、レッドウィング以外のメーカーからも類似デザインのブーツが数多く販売されています。
11インチ・ケミガムソール・ペコスブーツ8060(1950年代の名品)
近年のペコスブーツといえば、これまでに2つのトピックがありましたね。
2024年8月にワークラインペコス”1155”が日本に上陸。
そして翌年の2025年8月には、9インチのクレープソールペコス”8168(ホーソーン・アビリーン・ラフアウト)”が復活しました。
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そして今回の120周年記念で発売されたのが、11インチ丈でケミガムソールを備えた”8060”です。
レザーもホーソーン・ミュールスキナー・ラフアウトを使用し、直近で再版された8168とはまた異なる表情を見せてくれます。
次の項目から、それぞれのペコスが持つルーツについて解説していきます。
8060は低いヒールを持つローパーブーツ
「ペコスブーツ」とはレッドウィング社の販売するウエスタンブーツ(カウボーイ)の名称です。
先ほどレッドウィングの現行ペコスブーツは3種類存在すると言いましたが、今回の8060は”ローパーブーツ”と呼ばれるタイプです。
ローパーとはカウボーイの中でも、ロープを使って牛や馬の世話をする人たちのことです。
巧みにロープを操り、逃げようとする牛や馬を捕え、焼印を押したり、群れに引き戻したりする仕事をしています。
カウボーイというと馬に乗っているイメージが強いですが、ローパーは仕事柄、馬の乗り降りを頻繁に行います。
この時、従来のウエスタンブーツが持つ高めのシャフトとヒールは、作業用としては不向きでした。
その結果、低いシャフトとヒールに改良したローパーが生まれました。
今回の”8060”は低いヒールと、やや高めの11インチ丈のシャフトを持つローパーブーツです。
ホーソーン・ミュールスキナー・ラフアウトレザーもウエスタンの雰囲気にマッチしています。
一見シンプルですが、レッドウィング社とウエスタン世界を繋げる重要な意味を持つ1足なのです。
8060のサイズ選び
2025年8月に再販された、9インチのクレープソールペコス”8168”と同じ17番ラストです。
EワイズとDワイズが存在しますが、Dワイズはウィメンズサイズでの展開となっており、男性の場合は基本的にEワイズを選ぶことになります。
サイズ選びの際には実寸よりもハーフサイズ上げることをおすすめします。
Eワイズですが、甲と横幅がタイトです。
レッドウィングのサイズ選びについて解説した記事も書いていますので、気になる方はぜひご覧ください。
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ペコスブーツの歴史
レッドウィング社はかつてカウボーイの象徴の地”テキサス”に拠点を持っていました。
1930年代にはウエスタンブーツも販売していましたが、伝統的なウエスタンブーツは革が薄く、刺繍を施すことで強度を上げている(シャフトが立つようにして)いました。
このウエスタンブーツに、レッドウィング社が得意とする分厚く丈夫な革を使ったのが、ペコスブーツの始まりです。
「ペコスブーツ」は商標登録され、1959年に発売。
1961年にはワークブーツ市場で高い評価を得ていたトラクショントレッド・ソール(クレープソール)を使ったモデルが登場。これが今日の”8168”の源流になっています。
加えて1964年には高いハイトとヒールを持つカウボーイブーツ”1155”が登場。
こちらは長時間馬に乗って仕事をする人たちに適したブーツでした。
2007年にワークラインとヘリテージラインが区分されたことをきっかけに、1155系統はワークラインに、8168系統はヘリテージラインに分類されました。
日本で8168系統のペコスは残り続けましたが、1155系統のペコスはレザーと品番を変え、後に廃盤に。
2020年にはサイバーテロとパンデミックの影響で、8168系統のペコスも市場から姿を消してしまいます。
廃盤を惜しむ声が多い中、2024年8月に1155が日本上陸。2025年8月には8168が復活。
そして2025年10月には120周年記念モデルとして8060が新発売。
たった1年で3品番もラインナップに追加されました。
ペコスブーツのファンにとっては、嬉しいニュースの連続でしたね。
次の120年に向けてレッドウィングシティにタムカプセルを埋める
今回レッドウィング社では非常に興味深い取り組みをなされます。
タイムカプセルを用意し、ブーツ本体、レシピ、ルーツ情報、コーデ集などを入れ、レッドウィングシティに埋めます。
掘り起こすのは120年後とのこと。
レッドウィングジャパン代表の小林さんはこう語ります。
ブーツの良さ、クラフトマンシップ、ファンの方々の想いをタイムマシンに入れて、「120年後もレッドウィング社はこのままでいます。」という誓いを立てる。
このような取り組みは、創業120年の歴史において前例のない出来事です。
大胆だけど、どこかレッドウィングらしい、素敵な取り組みですね。
まとめ
本記事をまとめます。
120周年記念モデルを心待ちにしておられた方も多かったと思います。
近年レッドウィングでは廃盤品の再生産が活発化しており、その波を受けてなかなか良いラインナップになったと思いますね。
日本では特にエンジニアブーツを熱望する声が多数寄せられていたので、ファンにとって嬉しいニュースとなったはずです。
次の120年に向け、僕たちファンも変わらず、レッドウィングを愛していきましょう。