読者の知りたいこと

ここ数年で大きく直営店舗数を増やしたレッドウィング。
今まで東京・大阪・仙台にしかなかったのに、急に地方都市やSC内への出店が進み、驚かれている方も多いのではないでしょうか?
本記事ではレッドウィングが地方出店を進める理由を、ブーツマニアであり中小企業診断士の僕が、経営の目線で徹底的に解説していきます。
昔まで直営店は東京青山、大阪、仙台の3店舗だけだった
レッドウィングは元々、直営店を東京青山、大阪、仙台の3店舗のみしか構えていませんでした。
本店のような立ち位置である東京青山と、国内2店舗目となる大阪。そして2016年にオープンした仙台ですね。
それ以外にも、各地の正規取扱店やECサイトを通じてブーツを販売してきました。
なので各地の正規取扱店がその地域のレッドウィングの販売拠点の役割を果たしてきたわけです。
近年になって地方都市・SC内に直営店が続々とオープン
しかし、近年になってこの状況が大きく変わりました。
国内4店舗目となる新宿フラッグス店のオープンを皮切りに、東京や大阪に複数店舗を出店。
さらには今まで直営店が存在しなかった地域への出店も急速に進んでいきました。
新宿フラッグス店(2020年10月開店、2022年7月閉店)
2020年10月、国内4店舗目となる新宿フラッグス店がオープンしました。
新宿駅から徒歩圏内の商業施設”新宿フラッグス”のテナントに入店。
これまでレッドウィングの直営店が商業ビルのテナントに入る例はなかったため、多くのファンが衝撃を受けたのではないでしょうか?
また、これまでの直営店はレンガやアンティーク什器といった、歴史を感じさせるデザインが特徴的な空間でした。
一方、新宿フラッグス店は新宿という立地や商業ビルの雰囲気に合わせてか、モダンな印象の空間に仕上がっていました。
以降、レッドウィングは直営店を商業ビル内に続々とオープンさせていきます。
イメージも新宿フラッグス店に近い、モダン寄りなものが多いですね。
2022年7月にレッドウィングを含む複薄の店舗が、新宿フラッグスから撤退をしています。
ルクア大阪店(2021年8月開店)
2021年8月には、国内5店舗目であり、大阪府では2店舗目であるルクア大阪店がオープン。
これまたJR大阪駅直結の商業施設であるルクア大阪のテナントに入ります。
内装は駅ビルらしい雰囲気で、これまた今までの店舗とはイメージが異なりますね。
渋谷パルコ店(2021年9月開店)
2021年9月には、東京の流行発信地である渋谷に直営店がオープン。
渋カジ時代にあってほしかったという声も聞こえてきそうです(笑)
この渋谷パルコ店以降、各地でパルコに入店が続きます。
福岡パルコ店(2022年9月開店)
2022年9月、九州初となる直営店が福岡の天神にオープン。
僕自身も福岡県在住であり、オープン当初からよく足を運んでいます。
宮崎や鹿児島から来店される方もいるようで、九州一帯の販売拠点を担っています。
YouTubeでよくレッドウィングのブーツを紹介されているうなさんも、この福岡パルコ店には頻繁に足を運んでいるとか。
オープン当初にエイジングサンプルを貸し出しておられたので、それを見る目的で訪れた方も多いのではないでしょうか。
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うなさん(革靴小説うなブロ)の私物がレッドウィング福岡パルコ店に展示中!圧巻のエイジングを見逃すな!
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池袋パルコ店(2022年9月開店、2023年9月移転)
オープン当初は池袋パルコ本館でしたが、2023年9月に隣接するP'PARCOに移転しています。
池袋パルコ店でいったんパルコへの入店は終わりました。
次にオープンするとしたら、広島パルコですかね...。
中国地方の100万都市であり、日本有数のビジネスの拠点なので、ありうるかなと...。
三井アウトレットパーク滋賀竜王店(2022年11月開店・3ヶ月期間限定)
レッドウィングでは世界初のアウトレットショップがオープン。
廃盤になったモデルなど、掘り出し物が見つかる良い店舗でした。
これまでも正規取扱店ではファクトリーセカンド品を販売していましたが、アウトレットショップという展開には僕も驚きました。
三井アウトレットパーク札幌北広島店(2023年10月開店)
2023年10月には北海道にもアウトレットショップがオープン。
レッドウィングが所有している”良品として販売することが難しいが、まだまだ履けるブーツ”に、純正リペアを施し、アップサイクル商品として販売。
SDGsを意識したサステナブルな取り組みです。
名古屋店(2024年4月開店)
意外なことにこれまで出店していなかった東海地域に、名古屋店として初のオープンを果たしました。
3大都市圏である首都圏・近畿・東海の、東海にだけ出店がなかったので、愛知県にお住まいの方は歯がゆい思いをされてきたのではないでしょうか?
オープンしたのは名古屋・栄に存在する中日ビル。
中部地方最大のビル、そして名古屋のシンボルとして親しまれてきたこの中日ビルが、2024年4月にリニューアルオープン。
そのリニューアルオープンと同時に、レッドウィング名古屋店もオープンしました。
直営店を増やす理由
たった4年で3店舗から11店舗(閉店も含む)へと、大幅な店舗拡大をしたレッドウィング。
我々消費者としては嬉しい話ですが、なぜ急速に店舗数を増やしたのでしょう。
ここには3つの理由が存在します。
新規顧客の開拓
1つ目の理由が新規顧客の開拓です。
レッドウィング社が新規顧客を増やしたい理由は、2020年頃に発生したサイバーテロの影響ですね。
サイバーテロ被害により、日本で販売しているヘリテージラインの型紙の多くを消失したレッドウィング社。
データでなく印刷物として残してあった資料をかき集めても、アイコニックな品番を数種類しか生産できない状況に陥りました。
元々レッドウィングはコアなリピーター層をターゲットに売上を上げてきたブランドなので、既に多くの人が持っているアイコニックばブーツだけでは、リピート販売は望めません。
したがって、売上を上げるためには、新規の顧客を呼び込むしかありません。
この新規顧客(レッドウィングを持っていない人)に既存商品(レッドウィングのブーツ)を売る戦略を、新市場開拓戦略といいます。
直営店を地方に出店したり、さまざまな人たちの来店が見込める有名商業施設のテナントに入ったり、女性向けのブーツを推し出すようになったのも、新市場開拓戦略の一環と言えます。
オフラインマーケティング戦略
2つ目の理由は、オンラインでなんでも済ませられる時代に、あえてオフラインのコミュニケーションを重視するためです。
レッドウィングのブーツはサイバーテロ以前から、ECサイトで購入ができる状況でした。
コアなリピーター層をターゲットにするだけであれば、ECサイトだけで十分であると考えます。
しかし、新規顧客を開拓するにはイベントの開催や丁寧な接客など、オフラインで消費者にアピールすることが欠かせません。
これを行えるのが、直営店舗ということなのです。
実際に普段東京で活動されているレッドウィング・ジャパンの社員さんが、各地の直営店に出張に来られていることもあります。
各地で採用したスタッフへの教育だけでなく、会社をあげて各地の消費者に直接接客するということなのでしょう。
逆に今まで直営店が少なすぎたから
レッドウィングはブランドの知名度の割に、これまで直営店が少なすぎたというのも理由でしょう。
他のアメカジ系ブランドの店舗数を見れば、一目瞭然です。
例えば、レッドウィングと同じUSA製で、アメジャンの代表格であるSchottは国内に10店舗。サングラスの定番ブランドRay-Banは国内で18店舗。ジーンズの定番ブランドLevi'sは国内に62店舗が存在しています。
流行等の影響は無視できないものの、レッドウィングはこれらのブランドに十分並ぶと考えています。
だとすると、レッドウィングの直営店が3店舗だけというのは、やはり少ないと感じてしまいますよね。
直営店を増やすことによる弊害
ただし、”直営店が増えれば増えるほど良い。”と考えるのは安直すぎます。
直営店が増加することによる弊害も無視はできません。
一番はこれまで地域でレッドウィングを盛り上げてきた正規取扱店との関係性ですね。
直営店が3店舗だけだった時代に、日本の各地でレッドウィングをファンにお届けしてこられたのは、正規取扱店あってのことでした。
正規取扱店の近くに直営店ができてしまうと、どうしても競合してしまいます。
正規取扱店側も、”レッドウィングを販売できる”ことが商売上の利点だった側面があるため、レッドウィングブランドの恩恵を受けていることは間違いありません。
双方にとってブランドの販売権が重要な意味を持っています。
今後店舗拡大をしていく上で、この課題をどうクリアしていくかが問われます。
現在行われている施策として、正規取扱店にレッドウィング・ジャパンの社員を派遣して、イベントを開催しています。
正規取扱店に足を運ぶお客様が増えれば、そこで売れなくなる事態をある程度防ぐことができますね。
まとめ
本記事をまとめます。
顧客層が変化しつつも、いつの時代も変わらないヘリテージな魅力を、我々に伝えてくれるレッドウィングのブーツ。
近年の戦略の変化には、サイバーテロに屈しない前向きな姿勢が見て取れました。
今後またどこかの地域で直営店が出店するかもしれません。
今後の展開に、ますます目が離せません。