読者の知りたいこと
皆さんはリジッドデニム(生デニム)と聞いてどんなデニムを思い浮かべますか?僕は野暮ったく男臭い感じのストレートデニムを思い浮かべます。もちろんその雰囲気は大好きです。
しかし、普段使いしやすくて色々なファッションに合わせやすいのは少し細身のきれいめなシルエットのデニム。
リジッドデニム歴4年の僕が「リジッドデニムで細身のものってあるの?」という疑問にお答えします。
テーパードシルエットなら細身でスッキリ!
僕はリジッドデニムと聞いたら野暮ったくて男臭い、やや太めのストレートデニムを思い浮かべます。僕自身、長年その雰囲気に魅了され、いくつかの商品を愛用してきました。
しかし最近はやや細身のきれいめなシルエットに魅力を感じています。スタイリッシュな印象に見せることができ、様々なトップスとも合わせやすいからです。
そこでおすすめしたいのがテーパードシルエットのデニムです。スキニーほど細くありませんが、足首に向けてシェイプされるそのシルエットはカジュアル、モード、アメカジと多くのファッションに取り入れることができます。
近年は特にトレンドとなっていますが、スキニーと同じように今後も廃れることのない定番シルエットになりつつあります。
では本題のテーパードの効いたリジッドデニムを1つ紹介します。
僕はA.P.C.のプチニュースタンダードを強くおすすめします!
ブランド「A.P.C.(アーペーセー)」とは
皆さんはA.P.C.のデニムをおすすめされた経験はありますか?
僕は最初Levi's 501XXを購入予定でしたがシルエットがやや野暮ったく感じました。もっと細身のものが欲しいというニーズをセレクトショップの店員さんにぶつけると、A.P.C.のプチニュースタンダードをおすすめされました。結果的にそれを気に入り、購入に至りました。
まずA.P.C.という選択肢があることについて知っておきましょう。
A.P.C.(アーペーセー)とは
A.P.C.とはジャン・トゥイトゥ(Jean Touitou)が創設したフランス発のファッションブランドです。
ブランド名は「生産と創造の工房(Atelier de Production et de Creation)」を略したもので、洋服がデザイナーの名前で判断されることを敬遠したために付けられた名前です。
またジャン・トゥイトゥはA.P.C.創設の前にはKENZO、agnes b.、IRIEを経験しています。
「シンプルなスタイルを提案」、「奇抜さの除外」、「時代を超越したハイクオリティな服を提案する」、「常にクラシックな素材を使用する」というビジョンのもと、エレガントでカジュアルな服を作り続けています。
A.P.C.の人気デニムは3種類あります。
本記事でピックアップするのはプチニュースタンダードですが、他2種類も知っておくと買い間違いを防げます。モデル名が似ていますので注意が必要です。
主要デニム3種!ニュースタンダード、プチスタンダード、プチニュースタンダードの違い
引用:A.P.C.公式サイト
ニュースタンダード
最もクラシックなモデルです。「余裕のあるシルエット」、「股上深め」といった特徴があり、タイムレスに着られるベーシックなデザインになっています。裾に向かって緩やかにテーパードを効かせており、履いてみると以外にも野暮ったくなりません。
リジッドは14.5oz。リジッドでないストレッチタイプあり。セルビッジ仕様。
プチスタンダード
ニュースタンダードをベースにしつつ細身に仕上げたモデルです。「ヒップ、レッグ部分はスリム」、「股上浅め」といった特徴があります。スキニーデニムほど細くはなく、バランスの取れたシルエットです。
リジッドは14.5oz。リジッドでないストレッチタイプあり。セルビッジ仕様。
プチニュースタンダード
その名の通り、ニュースタンダードとプチスタンダードの特徴を良いとこ取りしたモデル。「ヒップ、レッグ部分はスリム」、「股上深め」で快適さと美しさを兼ね備えています。2024年現在のトレンドにもマッチしたシルエットです。
リジッドは14.5oz。リジッドでないストレッチタイプあり。セルビッジ仕様。
本記事ではこのプチニュースタンダードを取り扱っていきます。
A.P.C.プチニュースタンダードについて徹底解説
ここからはプチニュースタンダードの7つの特徴を解説していきます。
これらの特徴が、僕が購入を決めたきっかけになりました。
- テーパードシルエット
- リジッドの他、ウォッシュ加工やストレッチ生地もある
- カイハラデニムを採用
- セルビッジ仕様
- 股上深め
- シンプル&ミニマルなデザイン
- サンフォライズド加工(防縮加工)
スリムなテーパードシルエット
リジッドデニムには珍しいテーパードシルエットです。
その美しいシルエットは、男臭く無骨なアメリカンカジュアルとは一味違う、きれいめでモダンなフレンチカジュアルといったところでしょうか。
スキニーほどピタピタでないため、着用感も快適です。
リジッドの他、ウォッシュ加工やストレッチ生地もある
ラインナップされているのはリジッドだけではありません。
ウォッシュ加工やストレッチ生地もあります。本格的に一から育てるつもりではない、楽に履きたい、なんて人には良い選択肢です。
僕はリジッドをおすすめします。
新品時には濃紺ですが、履きこんで洗ってを繰り返すことによって、徐々に色が落ちてきて自分だけのデニムに育ちます。
カイハラ製のオリジナル生地を使って作られており、この生地の色落ちは美しいと定評があります。
生地に使われているマザーコットンは地が生成色であり、青色が濃い部分と色落ちした部分とのコントラストがは見る者を圧倒します。
カイハラデニムを採用
A.P.C.のデニムは、世界屈指のデニム生地メーカー「カイハラ社」製のオリジナル生地で作られています。
加えてその昔Levi'sのデニムを作るのに使われていたものと同型の織機で生地を作っています。
デニムの品質には間違いありません。
セルビッジデニム
セルビッジデニムとは
旧式の力織機(シャトル織機)を使って織られたデニム生地で、生地の端に「耳」と呼ばれるほつれ止めが施されています。
セルビッジデニムはデニムの中では高価になる傾向があります。
現在流通している多くのデニム生地は「W巾」と呼ばれ、大量生産に特化した高速織機(レピア織機など)を使って織られています。高速織機で一度に織れる生地の幅は約150cmです。またシャトルを使わない構造のため、1本の糸が往復せずに端で切られます。したがって「耳」もありません。
一方、セルビッジデニムを織るには旧式の力織機(シャトル織機)を使用する必要があります。旧式の力織機では一度に織れる幅が約80cmと、高速織機の半分程度しかありません。生地を織るスピードも高速織機の3~5倍かかります。このように最大10倍近く手間がかかるため、原価が高くなり、売価も高くなるのです。
なぜあえて非効率な機械を使うのかというと、セルビッジデニムにしか出せない独特の風合いがあるからです。
高速機械は規則正しく動くため、織られたデニムの生地表面が平らで、どこか味気ない雰囲気です。
一方、旧式の力織機は職人さんが糸の張りとスピードを調整しながら織っていきます。織られたデニムの生地表面にはムラができます。経年変化で色落ちしたときにもこのムラ感を楽しめます。こういった古き良き時代のものづくりがデニム愛好家から評価されているのです。
つまりセルビッジデニムとは、「古き良き時代のものづくりを再現するために、手間をかけて作ったデニム」ということになります。
トレンドの股上深め
2024年現在のトレンドは股上深めです。
プチニュースタンダードはトレンドにもバッチリはまっています。
シンプルでミニマルなデザイン
ここにA.P.C.の理念が表れており、無駄な装飾を排除したミニマルなデザインとなっています。
腰の革パッチや尻ポケットの赤タブがなく、尻ポケットにはステッチが施されていません。一見どこのブランドか分かりませんね。さらにボタンとリベットは上品でシンプルなシルバー。
ブランドの個性が出る部分をことごとくシンプルにしたことで、逆にそれがA.P.C.らしさに繋がります。生地の上質さが際立つのも良いポイントです。
サンフォライズド加工(防縮加工)
詳しくは後述の「ファーストウォッシュ後のサイズ感の変化(縮み)」をご覧ください。
サンフォライズド加工(防縮加工)が施してあり、ファーストウォッシュ後のウエストの縮みが抑えられています。
ただし過信しすぎないようにしましょう。水洗いすると縮みは必ず発生するのでそれは十分考慮しておくべきです。
購入する場合は店員さんに相談して試着をしながらサイズを選んでください。
A.P.C.プチニュースタンダードの残念な点
素晴らしい商品であるものの、個人的に残念に思った点が3つあります。
裾上げしないと足首がきつい
僕はエイジング大好き人間なのでリジッドを強くおすすめしますが、使ってみて分かったデメリットがあります。
それは、裾上げしないと足首付近が細すぎて、裾をまくりづらいことです。
リジッドデニムは洗うと縮む性質上、初洗いの後に裾上げする人がいます。縮んで長さが分かってから好みに合わせて裾上げした方が失敗がなく安全だからですね。僕も毎回そうしています。
しかし、プチニュースタンダードはテーパードシルエットであり、裾に向かってだんだん細くなっていきます。裾上げ前の足首付近は細すぎてまくりづらいため、ブーツアウトしたり、かゆい所をかいたりすることが難しいです。
縫製はベトナム
ここもデメリットに感じる人が多いのではないかと思う点です。
生地は日本製ですが、縫製はベトナムなんです。タグにはMade in Vietnamと記載があります。
アメカジファンやデニムファンは、Made in USAやMade in Japanに惹かれる人が多いのも事実。ベトナムだからといって良くないわけではありません。しかしどこの国で縫製が行われたのかはこだわりの1つとなり得ます。
他の有名なリジッドデニムの例をあげると、リーバイス 501XXは生地も縫製も日本(以前はトルコなどで行っていたが現在はすべて日本に切り替わっている)です。これだけで強みとなり得ます。
金具がエイジング(経年変化)しない
A.P.C.デニムのデメリットとしてよくあげられるのがボタンやリベットがシルバーのままエイジングしないことです。
ここは解釈が分かれるところですが、生地のエイジングが進んだ際にもワイルドな印象を抑えて小綺麗に保てるという意味ではメリットにもなり得ます。
僕はA.P.C.のデニムだったら金具はエイジングしなくても良いと思っている派なので、気にしていません。
ファーストウォッシュ後のサイズ感の変化(縮み)
ファーストウォッシュ前後の寸法を計測しました。
【リジッド(未洗い)】
サイズ | ウエスト | ヒップ | 股下 | 股上 | もも周り | 裾幅 |
33 | 90cm | 107cm | 88cm | 25cm | 61cm | 18cm |
【ファーストウォッシュ(水洗いあり)】
サイズ | ウエスト | ヒップ | 股下 | 股上 | もも周り | 裾幅 |
33 | 90cm | 104cm | 85cm | 25cm | 56cm | 17cm |
ウエストが変わっていないのには驚きです。
これはサンフォライズド加工(防縮加工)によって水洗いで起きる生地の縮みを抑えているからですね。
とはいえリジッド状態であまりにもタイトなサイズ感だと少しの縮みでキツくなってしまうため、サイズ選びの際は店員さんにしっかりと相談することをおすすめします。
ファーストウォッシュ前後で着用時の見た目にどれほど変化が起きるのかを調べました。
ファーストウォッシュ前後の変化としては数字でもわかる通り、もも周りが脚に沿うようになったことくらいです。ウエストは体感でも変わっていません。
ファーストウォッシュ後にはやっと裾直しができます。
水洗いした後はもう縮みませんので、自分の脚の長さに合わせて裾をカットして大丈夫です。
A.P.C.では商品1点につき1回限り、シングル仕上げの裾直しが無料です。レシートを持って行く必要があるので、なくさないように保管しておきましょう。
また、公式サイトに書かれている洗い方が面白いので、洗う前に参考として見ておくと良いです。
過激主義
出来るかぎりジーンズを洗わずに履き続け、初回洗いはドライクリーニングで、2回目以降の洗いは、WOOLITE NOIR(濃色製品用洗剤)を少量混ぜた水にジーンズを1時間程浸けておき、すすぎ、バスタオルで包んで干す。
セミ過激主義
WOOLITE NOIR(濃色製品用洗剤)を混ぜた水にジーンズを1時間程浸けておき、こすらずにすすぎと脱水をし、干す。
洗濯機
WOOLITE NOIR(濃色製品用洗剤)を使い、メニュー:常温水、デリケート洗い、脱水無し。
海水
出来るかぎりジーンズを洗わずに履き続け、ジーンズを履いたまま海に入る。乾いた砂でこする。
これを何度か繰り返す。水ですすぎ、太陽にあてて乾かす。
フレンチジョークというやつですね(笑)
「海水」はちょっと気になります(笑)
僕は上のいずれでもなく、クリーニング店で「ダブルウォッシュクリーニング」をしてもらいました。
ダブルウォッシュクリーニングとは、ドライとウェット(水洗い)の両方を行なうクリーニング方式です。ドライで油性の皮脂汚れを落とし、ウェットで水溶性の汗汚れを落とすことができるので、洗った後は生地が軽くなり、さっぱりします。
春秋冬は長時間着用していたため皮脂がつき、初夏にも履いていたため汗もついていました。
金額は通常のクリーニング(ドライ)よりも高いですが、皮脂も汗もきれいに落としたい方にはおすすめです。
履き込むことで起きるサイズ戻り(伸び)
洗うと縮む傾向にあるものの、履いていたら元に戻るかのように伸びてきます。
洗った後3ヶ月程度履き込んだときの戻り(伸び)を計測しました。
【サイズ戻り】
サイズ | ウエスト | ヒップ | 股下 | 股上 | もも周り | 裾幅 |
33 | 90cm | 107cm | 64cm | 25cm | 56cm | 18cm |
※裾上げ後のため股下が短くなっております。
ヒップと裾幅が伸びていますね。ウエストは変化が見られませんでした。
ヒップは特にテンションがかかりやすいためサイズが戻ったのだと思われます。
裾幅は毎回足が通るときに広がるからでしょうか。
いずれにしても大幅な変化は見られません。寸法が安定しているのは良いことです。
色落ちエイジング(経年変化)の約2年間の経過写真
僕はプチニュースタンダードの色落ち経過を写真に収めています。
段階ごとにどんな色に変わっていくのかを確認いただけます。
リジッドのまま約9ヶ月履き込み
僕が購入したのが2021年11月1日。それから2022年8月9日のファーストウォッシュまで、リジッドのまま約9ヶ月履きました。
僕の適正サイズは洗濯時の縮みを考慮して32ですが、余裕のある大きめサイズでもシルエットがきれいに見えたので、33を購入。
つまり2~3サイズ程度大きく履いていることになります。
糊がついたままヒゲの跡がバキッと入り、部分的に色が抜けています。
ハチノスにも跡が入っています。ここも部分的にですが色抜けが見られますね。
最もエイジングが進んでいるのはバックでした。
座って作業をすることが多いため、股の部分に色落ちが見られます。テンションがかかりやすい中央のベルトループは白くなっている箇所が見られます。
ひざが前にせり出して立体的になりました。この部分の色落ちは控えめです。
ファーストウォッシュ後
ファーストウォッシュ後にどのような変化があったかを見ていきます。
先述したようにクリーニング店で「ダブルウォッシュクリーニング」をしてもらっています。水で落ちやすいインディゴに対して水洗いをしたため、生地に青みが出てきました。
ヒゲとハチノスはほとんど出ていません。洗うことで色が落ちてバキッとしたメリハリができるかと思っていましたが、そう上手くはいきませんね。もっと長期間履き込まないとメリハリのあるエイジングはしないということです。
洗ったことで縮みが起き、立体的になっていたひざは平坦に戻っています。履いていればまた自分の脚の形や動きに合わせて伸びてくることでしょう。
最も色の変化が見られたのはバックですね。リジッド9ヶ月履き込み状態でもやや色が落ちていましたが、洗ったことでさらに青みが強くなっています。
セカンドウォッシュ後に6ヶ月履き込み
2023年の夏頃にセカンドウォッシュをしています。
洗い方は最初と同じダブルウォッシュクリーニング。クリーニング店も同じところを利用しました。
ファーストウォッシュ後よりも明るいブルーになりました。とは言ってもまだまだ濃い色です。
この段階になると本格的に色落ちが見られ始めます。
ボタンフライ部分が白くなり、ヒゲとハチノスの跡がしっかりしてきました。
バックやひざ上も全体的に白くなり始め、ポイントだけでなく部位単位でも濃さが変わってきました。
エイジングが進んだとはいえ、まだまだこれから。
今後の経過写真も随時アップしていきます。
A.P.C.プチニュースタンダードのコーデ(着こなし)
僕がおすすめしたいのがデニム・オン・デニム。
アメカジでは定番の着こなしの1つとして数えられますが、普通のカジュアル界ではナシと言われがちなコーデでした。
しかしこれがA.P.C.プチニュースタンダードなら結構いけるんです。
写真を見た方が早いのでお見せします。
プチニュースタンダードは「細身・シンプル・濃紺」なので、男臭いデニムとは違う雰囲気を持つことは先ほどから説明してきました。
Gジャンを同じく「細身・シンプル・濃紺」のものにすれば、ゴツさや野暮ったさとは無縁の洗練されたスタイルになります。
ただし色が落ちてくると濃紺ではなくなってきますので、色が濃いうちに楽しみたいコーデです。
まとめ
本記事をまとめます。
- 細身のリジッドデニムを探している方にはA.P.C.プチニュースタンダードという選択肢があることをぜひ知ってほしい。
- カイハラ生地を使用していたり、セルビッジ仕様であったりと、本格的なリジッドデニムである。
- 本格派リジッドデニムには珍しいテーパードシルエットやミニマルなデザインが洗練された印象を与える。
- サンフォライズド加工によってファーストウォッシュ後の生地の縮みを軽減している。
- 僕の場合はセカンドウォッシュ後に約6ヶ月間履き込んだら、だんだんと色落ちを感じられるようになってきた。
- きれい目なデニムなので様々なコーデにハマる。デニムオンデニムにも◎
本記事がリジッドデニム選びに迷われている方の参考になったら幸いです。
テーパードシルエットのリジッドデニムならA.P.C.プチニュースタンダードで決まり!
皆さんもお気に入りの1本を見つけて楽しいデニムライフを送りましょう!