読者の知りたいこと


様々なモデル・カラー・マテリアルが存在することで有名なコンバースですが、
実はオーストリッチレザー(ダチョウの革)を型押ししたものが存在することをご存じですか?
しかも、コンバースジャパンが発売した日本企画モデルと、米国コンバース倒産前のアンダーライセンスモデルの2種類が存在します。
本記事ではレザーマニアである僕が、オーストリッチ型押しレザーを使った個性的なオールスターについて徹底解説します。
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コンバースにはオーストリッチ型押しレザーを使ったモデルが2種類存在する
具体的な商品説明を行う前に、オーストリッチモチーフのコンバースオールスターが2種類存在する事実について、知っておいていただきたいと思います。
コンバースジャパンが発売した日本企画モデル(2002年以降)
本記事で紹介するのはこちらのモデルです。
伊藤忠商事による直営展開になってから発売されたモデルであり、現行の国内販売コンバースと同じ系譜を持ちます。
コンバースジャパン誕生の歴史
コンバースジャパンは伊藤忠商事の傘下体制で運営されており、米コンバース社(及びその親会社の米ナイキ社)とは独立した存在であることは、マニアの間では有名な話。
2001年に米コンバース社(旧)が倒産した際に、一時的に伊藤忠商事も資本参加し、日本国内におけるコンバースブランドのシューズに関する商標権と、シューズ以外のアパレル製品に関する商標権を獲得。
しかし2003年にはナイキ社が米コンバース社(旧)を買収したことで、伊藤忠商事と米コンバース社(新)の資本関係は切れました。
この一連の出来事により、”伊藤忠商事傘下のコンバースジャパン”と”米ナイキ社傘下の米コンバース社(新)”という、同じブランド名なのにそれぞれ別の会社が運営しているという、特殊な構造となりました。
米コンバース社倒産前のアンダーライセンスモデル(1980〜2000年代前半)
俗に言う「アンダーライセンス期」にもオーストリッチモチーフのコンバースオールスターが存在しました。
コンバースのアンダーライセンス期とは
そもそもアンダーライセンスとは、本来の権利者(ライセンサー)がライセンスを与えた相手(ライセンシー)が、さらに別の第三者に再度ライセンスを与えることを指します。
1980年代から2000年代前半にかけては、米コンバース社(旧)が伊藤忠商事にライセンスを与え、伊藤忠商事がさらに月星化成(現ムーンスター)等へアンダーライセンスを付与する形で、日本国内における企画・製造・販売が行われていました。
整理するとこんな感じ。
インソールに「MADE UNDER LICENSE FROM CONVERSE Inc., U.S.A.」と記載されているのが、アンダーライセンス期特徴。
現在ではコンバースジャパンと米コンバース社(新)が別会社になってしまったため、再現することができない幻の企画品となってしまいました。
ちなみに、
2001年の米コンバース社(旧)倒産以降、日本のコンバースは伊藤忠商事の傘下体制になるわけですが、現在でもMade in Japanモデルはムーンスター久留米工場で製造されています。
つまりアンダーライセンス期のモデルは、「元祖・日本製コンバース」なのです。
このような理由から、アンダーライセンス期のものはコンバースの歴史を語る一足として、高い市場価値を誇っています。
コンバースオールスターオーストリッチ型押しモデルの特徴
写真を見て分かる通り、数ある本革モデルの中でも一際異彩を放つ本作。
一体どんな特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。
オーストリッチ型押しレザーを使用
このモデルの一番の特徴は、オーストリッチの型押しレザーを使用していることです。

という方のために、オーストリッチ革、型押し革について、それぞれ解説していきます。
オーストリッチ革とは
オーストリッチ革とは、ダチョウの革の中でも脚部以外の箇所のことを指し、エキゾチックレザーに分類されます。(脚部はオーストレッグ革と呼ばれ、オーストリッチ革とは区別されています。)
主な用途はバッグや財布ですが、稀に革靴、ブーツ、ベルトなどにも使われています。
革にする過程で、羽毛を抜いた後”クイルマーク(軸痕)”と呼ばれる丸みのある突起が生じます。
このクイルマークがオーストリッチ革の一番の特徴なのですが、ダチョウの毛穴が作り出す天然の模様のため、採取できる量に限りがあります。
クイルマークが存在する箇所は革全体の半分以下とも言われ、クイルマーク入りの革は希少とされています。
ワシントン条約の規制対象となっていることも、革の希少性に拍車をかけています。
カラーはブラック、ブラウン、グリーン、ブルーなどがあげられます。
- ブラック
- ダークブラウン
- ブラウン
型押し革とは
型押しとは、天然皮革(主に牛革)に金型を乗せ、熱と圧力をかけてプレスすることで革に模様を付ける作業のことを指します。
型押し革とはこのようにして作られた革のことです。
クロコダイルやパイソンをはじめとしたエキゾチックレザーは、原皮が希少なので商品価格が高くなります。
また鞣しや加工などが難しく、取り扱いに専門技術を要する傾向があります。
その代替案として生まれたのが型押し革です。
流通量の多い牛革にエキゾチックレザー風の模様を付けることで、「オーストリッチ風」、「クロコダイル風」、「パイソン風」のアイテムを安価で販売することができます。
本牛革を使用しているため、合成皮革のようなチープさをある程度抑えることができます。
- クロコダイル型押しレザー
- パイソン型押しレザー
- オーストリッチ型押しレザー
金型を使用するためデザインの自由度が高く、本来の革には出せない「花柄」、「幾何学模様」などを作り出すことができるのも、型押し革の魅力です。
さて、革の種類を一通り理解したところで、ここからはコンバースに使われたオーストリッチ型押しレザーについて掘り下げてみましょう。
クイルマークの型押しがリアル
まずオーストリッチ革の象徴クイルマークの再現度を見てみましょう。
これ、実は型押し革の中でもかなりリアルな部類です。
- 左足
- 右足
クイルマークの大きさ・形に加え、色合いやシボ感まで本物そっくりに加工。
私自身、型押し革であることを聞くまで、本物であると勘違いしていました。
チープさを感じない高級感のある作りです。
本オーストリッチ革とオーストリッチ型押し革の比較
では実際に本物のオーストリッチ革と比較してみたらどうか。
- オーストリッチ型押しレザー
- 本オーストリッチレザー
革にも個体差があるため、一概には言えませんが、本物はシボやクイルマークに立体感がありますね。
一方で型押し革は革全体が平坦な印象です。
本物と型押しを見分ける方法として「毛穴を確認する」ことがあげられます。
クイルマークは元々羽毛を抜いた跡なので、羽毛が生えていた皮膚の奥に通じているはずです。
よって本物のオーストリッチ革の場合は、クイルマークに穴(毛穴)が存在します。
本物は毛穴を確認できるのに対し、型押しは毛穴がありません。
こうして見比べると、本物と型押しの違いがよく分かりますね。
ブラックとブラウンの2色展開
- ブラック
- ブラウン
コンバースジャパンのオーストリッチ型押しオールスターは、ブラックとブラウンの2色で展開されました。
どちらもオーストリッチの定番カラーですね。
ブラウンは濃いめのダークブラウンなので、ヴィンテージ感のあるアメカジらしい仕上がりです。
欲を言えばグリーンがあっても良かったのではないかと思います。
グリーンもオーストリッチと相性が良く、レザーブランドでは頻繁に見かけるカラーです。
こういった珍しい色のスニーカーを作るときには、レザーとの相性が大事になりますが、オーストリッチであれば難なくマッチします。
ゴム色のガムソールを使用
ガムソールを使用しているのもポイントです。
高級感のあるオーストリッチ型押しレザー×ヴィンテージ感の強いガムソールは、コンバースにありそうでなかった組み合わせです。
「コラボレーションモデルなの!?」と思ってしまいそうなほど、見慣れない外観ですね。
エレガント&ヴィンテージを体現する粋なチョイスです。
アッパーと同色の裏地
裏地の色はアッパーの色と同じです。
アッパーのカラーがブラウンならブラウンの裏地、ブラックならブラックの裏地が使われているということですね。
アッパーと裏地の色を統一することで、カラーバランスのまとまりを得ることができます。
履いてしまえば見えなくなる部分ですが、見えない所までこだわって作られているのが好ポイント。
コレクション用途や部屋に飾る用途であれば、嬉しいディテールの1つですね。
トゥスプリングが小さいフラットフォルム
トゥスプリング(靴を水平な床上に置いたときのつま先の床面からの距離)が小さいことが特徴です。
これは日本製モデルに見られる特徴であり、中国製(後述)である当モデルがこの仕様を持っているとは正直思いませんでした。
今回比較したのは、クロコハイ(日本製)、ナチュラルパイソンハイ(インドネシア製)、当モデル(中国製)の3つ。
中国製の当モデルはインドネシア製のナチュラルパイソンハイに比べて、つま先が地面に近く、反り返りが小さいことが確認できます。
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一方で日本製のクロコハイと比べると大きな差を感じませんでした。
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当モデル自体が特殊形状なのか、はたまた中国製と日本製のフォルムが似通っているのかを判断することはできませんでしたが、いずれにせよ、当モデルはトゥスプリングが小さいことが断定できました。
2002年以降に発売されたモデルと推測できる
冒頭で伊藤忠商事の直営展開なってから発売されたモデルであると言いましたが、実は正確な情報源はなく僕の推測によるものです。
インターネット上にも情報がほとんど存在せず、正確な発売年月を調査することはできませんでした。
しかし、使われているパーツなどから概ね2000年代前半に発売されたモデルであろうことが推測できます。
推測できた理由は以下の3つです。
それぞれ写真を使って解説していきます。
中国製を示すタグ
まずベロ裏のタグですね。
「MADE IN CHINA」つまり中国工場で製造されたことが明らかになっています。
米コンバース社(旧)が2001年に倒産した後、アメリカ工場を閉鎖して、アジア圏に生産拠点を移しました。
つまり、中国工場での生産が本格化した2001年以降。
よって、中国製コンバースは2001年以降に発売されたモデルである可能性が非常に高いと言えます。
加えて、オーストリッチ型押しモデルはネット上にほとんど情報が載っていないヴィンテージ品なので、2001年の中国生産本格化後、比較的すぐに製造されたものだと推測できます。
インソールが2002年以降の仕様
インソールは2002年以降の仕様になっています。
1990年代までは、米コンバース社(旧)がアメリカ・ノースカロライナ州のランバートン工場で製造していたため、インソールには「MADE IN USA」の文字が入っていました。
しかし、米コンバース社(旧)が2001年に倒産した後、アジア圏に生産拠点が移ると「MADE IN USA」の文字が消えます。
このことからも、2002年以降に製造されたモデルあると推測できるのです。
ヒールパッチが2002年以降の仕様
ヒールパッチもインソールと同様に、2002年以降の仕様になっています。
こちらも1990年代までは「MADE IN USA」が入っていましたが、2002年からは消えています。
オールスターオーストリッチ型押しモデルのコーディネイト
せっかくエキゾチックレザーモチーフということで、シャツもエキゾチックレザーであるパイソン系をチョイスしました。
シャツのグレー×スニーカーのブラウンがシックな組み合わせで、夏でも大人っぽい雰囲気のコーデが楽しめます。
真夏のアメカジスタイルにはもってこいの一足です。
オールスターオーストリッチ型押しモデルの入手方法
推定すると20年以上前に発売されたモデルであり、入手が非常に難しい一足です。
型押しレザー×ガムソールという特殊な仕様であることから、何らかの限定発売モデルであった可能性も高いとみています。
元々たま数が少なかったでしょうし、入手には苦労を要しそうです。
今購入するとしたらメルカリ・ヤフオクなどの中古サイトを探すことになります。
欲しい方は根気強く出品されるのを待ってみると良いでしょう。
僕もマイサイズ丁度のものを買うことはできず、ハーフサイズ上のものを購入しています。
27.5cmというゴールデンサイズのものなので、これでもかなり運が良かった方です。
希少モデルは争奪戦になりやすいので、売り切れないうちに買うことをおすすめします。
まとめ
本記事をまとめます。
コンバースオールスターの中でも一際謎めいた、オーストリッチ型押しレザーモデルを紹介しました。
もしかすると今後、本物オーストリッチレザーモデルが発売される日が来るかもしれません。
ワシントン条約や革の価格高騰という壁もありますが、実現したら非常に面白いですね。
コンバースブランドがあれば、例え20万円でも買う人がたくさんいそうです。