読者の知りたいこと
「ラフアウトレザーはスムースレザーと違うからどういう手入れをしたら良いんだろう…?」
そんな風にお悩みの方も多いのではないでしょうか?
本記事ではラフアウトレザーの手入れの方法を解説しています。
実はラフアウトレザーは手入れが簡単なだけでなく、水に強く、雨の日も履ける優れものなんです。
具体的には防水スプレーを使って手入れしていきます。
基本的にはスウェードと呼ばれるレザーと同じ手入れを行いますので、スウェードの手入れが知りたいという方にもおすすめの記事になっています。
また、レッドウィングのオイルドラフアウト(オイルを含んだラフアウトレザー)である「ミュールスキナー」レザーのお手入れ方法も紹介しています。
ラフアウトの靴をお持ちの方は必見です。
ラフアウトレザーは水に強く、雨の日にも履ける
はじめにラフアウトレザーとは何かを解説します。
ここを誤って解説されることが多いので定義を書きます。
ラフアウトレザーとは
ラフアウトレザーはスウェードによく似たレザーです。
革を裏返して起毛面を表に使ったレザーになります。
対してスウェードは革を2枚にスライスして銀面と張り合わせ、両面を起毛面にしたレザーのことを言います。
※よく「ラフアウト=よりラフな毛並みのスウェード」という解説をされますが誤りです。
基本的にはオイルを含まないドライレザーのため通気性が良く、クロム鞣し100%で仕上げられるので、水に強いという特徴を持ちます。
後ほど解説しますが雨の日にもおすすめしたいレザーです。
ラフアウトレザーが雨の日にもおすすめな4つの理由
ラフアウトレザーが雨の日におすすめな理由は4つあります。
- ラフアウトレザーはそもそも水に強いレザーだから
- 密集した毛が水を浮いた状態に保つから
- 毛によって革の地まで距離ができ、水が到達しにくいから
- 裏側(裏革)の厚い部分を擦って通気性を良くしているから
ラフアウトレザーはそもそもが水に強いレザーです。
先述した通り、ラフアウトレザーはクロム鞣し100%で仕上げられることが多いため、水に強いという特徴を持ちます。
鞣し方法には大きくクロム鞣し、ベジタブルタンニン鞣し、混合鞣しの3種類がありますが、クロム鞣しは3つの中で最も水に強いです。
ラフアウトレザーは起毛革の一種です。密集した毛が水を浮いた状態に保ち、革の地まで距離ができ、水が到達しにくいのです。
またレッドウィングのラフアウトが典型ですが、ブランドによっては裏側(裏革)の厚い部分を擦って通気性を良くしています。
湿度が上がりやすい雨の日にも蒸れにくく、快適に履くことができるのです。
ラフアウトレザーの手入れの方法・順序を解説
はじめに結論を言うと、ラフアウトの手入れ=ラフアウトの防水処理です。
通常、ラフアウトはオイルを含まないドライレザーで作られるため、オイルやクリームは塗りません。
油分がない状態でも乾燥によって硬くなることがありません。
ラフアウトとスウェードの違いを先ほど解説しましたが、手入れの方法や使うケア用品には違いがありません。
スウェード用のケア用品を選べば大丈夫です。
準備する物
まず準備するものはスウェードブラシとスウェード用防水スプレーの2つです。
クリックすることで画像を拡大できます。
それでは手順を追って解説していきます。手順は以下の通りです。
②スウェードブラシでほこり落とし
③20cm程度離して防水スプレーを吹きかける
④ブラシで防水成分をなじませ、毛並みを整える
★完了★
手順①:靴紐をほどくorベルトを外す
ブラッシングの前に靴紐やベルトを外します。
後工程のブラッシングをしやすくするために行います。
紐やベルトで隠れている部分には見えないほこりや汚れがたまっています。
手順②:スウェードブラシでほこり落とし
スウェードブラシで毛の中に入り込んだ汚れをかき出します。
ブラシはスウェード用を用意しましょう。スムースレザーの場合にはこの工程で弾力のある馬毛ブラシを使いますが、ラフアウトの場合は毛の奥の汚れをかき出す必要があります。
なので基本的にはコシの強い硬めのブラシで毛の奥までブラッシングします。
ただしブラッシング自体は優しめを心掛けてください!強くしてしまうと毛が抜けるなどのダメージになります。ブラシが強いので優しい力でも十分ほこりが落とせます。
詳しくは本記事の「3.ラフアウトレザーにおすすめのお手入れ用品」で解説しますが、ラフアウトの手入れに使えるブラシは真鍮ブラシ、真鍮&ナイロンの混合ブラシ、ナイロンブラシ、豚毛ブラシ、馬毛&豚毛の混合ブラシの5種類があります。
今回手入れに使ったものはColumbus×東急ハンズのコラボスウェードブラシです。全国の東急ハンズで買うことができます。ブラシの硬さがほどよいため、僕はこれを使っています。
ベルト裏(紐靴の場合はタン)やコバには汚れがたまりやすいです。
しっかりとブラッシングします。
手順③:20cm程度離して防水スプレーを吹きかける
最初に注意点を書いておきます。
- 使用方法をよく読むこと
- 必ず外で行うこと
スプレーによって「振らずに使用」するものもあります。注意書きをよく読みましょう!
僕は癖でよく振ってしまうので皆さんは注意してください(笑)
また防水スプレーにはフッ素樹脂が入っています。それが靴の表面に付着することによって水をはじく仕組みです。
そのフッ素樹脂を吸い込んでしまうと炎症や呼吸困難を起こす場合があります。必ず風通しの良い屋外で行ってください。
おおよそ20cm離してスプレーします。至近距離ではまんべんなく吹き付けられないのである程度距離を取ると良いです。
スプレーは靴全体に行いますが、特に雨が当たる部分を重点的にスプレーします。
エンジニアブーツなどのシャフトが長いものは、シャフトよりも甲周りを重点的にスプレーします。
ブーツアウトで履く場合にはシャフトに雨が当たらないからです。
ブーツインで履く場合にはシャフトにもしっかりと吹きかけます。
防水スプレーには防水効果だけでなく革が汚れにくくなる効果と革に栄養を与える効果があります。
ラフアウトの防水処理=ラフアウトの手入れなのです。
通常、ラフアウトはオイルを含まないドライレザーで作られるため、オイルやクリームは塗りません。防水スプレーで栄養補給をします。
手順④:スウェードブラシで防水成分をなじませ、毛並みを整える
最後にスウェードブラシでスプレー成分を均一になじませましょう。両足に吹きかけてからすぐ行って大丈夫です。
ここで使うブラシは汚れ落としで使ったものと同じで問題ありません。防水スプレーは揮発性が高いのでブラシが汚れることもありません。
【完了】防水効果を検証しました
これで完了です。
このようにラフアウトレザーはお手入れも簡単なのです。
それでは実際に防水できているか確認してみます。
上の写真のように革が水を完全にはじいています。
靴の上に残った水も防水スプレーの撥水効果でしずく状になっています。歩いていたらポロポロ落ちてくれます。
【番外編】補色
ここからはお好みですが、退色したレザーに対して補色をすることもできます。
具体的にはスウェード用の補色剤を使います。
補色は先ほどの防水処理とは別の日に行います。
防水スプレーを吹きかけた後でしてしまうと、補色で使う液剤をはじいてしまい、補色できない可能性があるためです。
ラフアウトの補色は必ずしも行った方が良いわけではありません。
ラフアウトレザーはレッドウィングなどのアメカジ系ブランドから出ていることが多く、色抜けを味として楽しむ文化があります。
今回手入れしたレッドウィング8274もブラックからグリーンに退色していますが味として楽しむために今後も補色しないつもりです。
一方で補色を推奨するのはスウェードのドレスシューズです。
ビジネスで履く機会も多いドレスシューズは、外観をきれいに保つためにも補色することをおすすめします。
レザーケアブランドのモゥブレイによるスウェードの補色動画を載せておきます。
必要な方はご覧になってください。
【補足】いくら水に強いといっても防水は必須!しなかったら場合は水シミになる…
ここまで聞いてこんな疑問が出てくる方もいらっしゃると思います。
結論を言うと必ず防水処理はしておきましょう。
参考までに僕のラフアウトのエンジジニアブーツを防水処理なしで雨の日に履いたときの写真をお見せします。
確かに起毛しているおかげで水が完全に染みてはいませんが、雨が強く当たり続けた箇所はベチャッとシミになっています。
防水処理せずに雨の日に履き続けるとシミになるかもしれません。
雨の日に快適に履ける効果を最大限発揮するためにも防水処理は必須です。
栄養補給という面でも防水スプレーには重要な役割があります。必ずしておくべきです。
頻度は1ヶ月半に1度くらいで良いです。そのくらいは防水スプレーの効果が持続します。
ラフアウトレザーにおすすめのお手入れ用品
ラフアウトのお手入れにはスウェードブラシとスウェード用防水スプレーの2つが必要でした。
補色が必要な方はスウェード用の補色剤も必要ですね。
それぞれのケア用品でおすすめのものを紹介します。
スウェードブラシ
ラフアウトの毛の奥の汚れをかき出すために、コシの強い硬めのブラシを手入れに使います。
ラフアウトの手入れに使えるブラシには、ブラシの毛が硬い順に真鍮ブラシ、真鍮&ナイロンの混合ブラシ、ナイロンブラシ、豚毛ブラシ、馬毛&豚毛の混合ブラシの5種類があります。
毛が硬いほど汚れが落としやすいですが、力を入れすぎてしまった場合にダメージが強くなります(ラフアウトの毛が抜けることがあります)。
ナイロンブラシと豚毛ブラシはどれを使っても大きな違いはありません。
本記事では真鍮ブラシと豚毛ブラシ、真鍮&ナイロンの混合ブラシ、馬毛&豚毛の混合ブラシのおすすめ商品を紹介します。
真鍮ブラシのおすすめ
BRIGA(ブリガ) スウェードブラシ
BRIGAはワークブーツ用シューツリーで有名なブランドです。
他にもローファー用シューツリー、馬毛ブラシ、スウェードブラシを展開しています。
0.08mm極細真鍮ワイヤーで起毛皮革を傷つけずにホコリや汚れを取ることができます。
柄にブナ材を使用しており、適度な重量感と持ちやすさから、軽い力でブラッシングをすることができます。ブラシの毛が硬めの真鍮ブラシには嬉しい仕様です。
高級感のある外観も魅力的です。手入れのモチベーションを高めてくれます。
真鍮&ナイロンの混合ブラシのおすすめ
SAPHIR(サフィール) スエードブラシ
SAPHIRは1920年にフランスで誕生したレザーケアブランドです。
「いいものを大事に使う」というレザーの本場ヨーロッパの伝統的な価値観に沿い、選りすぐりの材料を使用しています。
SAPHIRのスウェードブラシがおすすめ理由は3つあります。
- 真鍮の毛とナイロンの毛に段差を設けているから
- 縮れ真鍮を使用しているから
- 左右非対称のフレーム形状
それぞれ解説します。
1つ目は、真鍮の毛とナイロンの毛に段差を設けていることです。
これにより軽くブラッシングするとナイロン毛がラフアウトの毛並みを整え、強くブラッシングすると真鍮毛がラフアウトの毛並みの奥の汚れをかき出します。
2つ目は、縮れ真鍮を使用していることです。
真鍮をあえて縮れさせることで、適度なハリとコシを実現しています。
3つ目は、左右非対称のフレーム形状です。
ブラッシングのしやすさを追求した柄の形をしています。
革を傷つけにくい角の無いフレームも好ポイントです。
馬毛&豚毛の混合ブラシのおすすめ
Columbus×東急ハンズのコラボスウェードブラシ
馬毛&豚毛の混合ブラシはあまり見かけません。
スウェード用として売り出されている商品はColumbus×東急ハンズのコラボのみです。
Columbus(コロンブス)は1919年創業の日本企業です。
Boot Blackというシュークリームで有名です。
国内大手のレザーケアメーカーと東急ハンズがコラボして企画・開発した商品の中に、紹介する馬毛&豚毛の混合ブラシがあります。
適度な毛の硬さを持ち、ラフアウトの毛にダメージを与えることなく、汚れをしっかり落としてくれます。
僕のようについつい力を入れすぎてしまうという方には特におすすめです。
全国の東急ハンズのレザーケアコーナーで購入できます。
スウェード用防水スプレー
M・MOWBRAY(エム・モゥブレイ) スエード・ヌバック用栄養・防水スプレー
M・MOWBRAYは株式会社R&Dが発売している日本のシューケアブランドです。
プロ、シューズブランド、愛好家から数多くの支持を得ています。
様々なレザー、用途に合わせた商品を取り扱う総合レザーケアブランドです。
本記事で僕が使用したものがこちらの防水スプレーです。
有名なメーカーから出ており、本記事で効果も検証済みなので安心してお使いいただけます。
スウェード用補色剤
スウェード用の補色剤にはスプレータイプとリキッドタイプがありますが、僕はリキッドタイプをおすすめします。
FAMACO(ファマコ) スエードカラーダイムリキッド
こちらも株式会社R&Dから発売されている商品で、M・MOWBRAYの派生ブランドになります。
リキッドタイプをおすすめする理由は3つあります。
- 液体で出てくるので着色効果が高いから
- 塗りたい部分をコントロールしやすいから
- 濃さを調整しやすいから
それぞれ解説します。
1つ目は、液体で出てくるので着色効果が高いからです。
起毛繊維の深部まで着色液が浸透し、根本からしっかりと補色できます。
2つ目は、塗りたい部分をコントロールしやすいからです。
スプレータイプは吹付式なので、どうしても的が外れやすいです。
対してリキッドタイプは先端のスポンジ部を革に押し当てて直接塗布するので、必要な部分に補色剤を塗布できます。
3つ目は、濃さを調整しやすいからです。
スプレータイプは的を外しやすい関係上、濃さ調整のための塗り重ねの難易度が上がります。
対してリキッドタイプは塗りやすさから濃さの調整も簡単です。
色の濃さは靴の外観に関わるので、特に重視したいポイントです。
また、本商品は一度の作業で色が濃くなりすぎることを防ぐために、着色力をあえて弱めにしています。
濃さを調整するのに特化した商品でもあるのです。
レッドウィングのミュールスキナーのお手入れ方法も解説
基本的にラフアウトはオイルを含まないドライレザーであると言いましたが、中にはオイルドラフアウトと呼ばれるオイルを含んだタイプもあります。
その一例がレッドウィングから出ているミュールスキナーです。
通常のタンカラーのラフアウトレザーよりも濃い色合いが特徴のホーソーン・ミュールスキナーと、スタイリッシュなグレーカラーが特徴のスレート・ミュールスキナーの2色が存在します。
ミュールスキナーとは
レッドウィングのブーツに使われているオイルドラフアウトです。
靴製造のフィニッシュ工程でワックスを付けたバフをかけて仕上げています。
この工程によりレザーにムラ感が生まれ、ワックスにより毛足が寝てややスムースになります。
経年変化(エイジング)によりワックスで寝かされていた毛足が起き上がり、オイル抜けにより色が薄くなります。
これが通常のラフアウトにない独特な表情をもたらします。
このミュールスキナーのお手入れ方法について解説します。
通常のドライレザーのラフアウトのときと、手順①②④は同じです。
異なるのは手順③で防水処理ではなく、オイルアップ(油分補給)をするという点です。
オイルドラフアウト特有の工程です。
そしてミュールスキナーのエイジングに見られる毛羽立ちを「起きた状態のままにしたいか」、「寝た状態に戻したいか」で使うケア用品が異なります。
毛羽立ちを「起きた状態のままにしたい場合」、「寝た状態に戻したい場合」それぞれでおすすめのケア用品を紹介します。
毛羽立ちを起きた状態のままにしたい場合
エイジングして毛羽立った風合いを味として楽しみたい方向けに、おすすめのケア用品を紹介します。
M.MOWBRAY SADDLEUP(エム・モゥブレイ サドルアップ) レザーエイジングスプレー
SADDLEUPシリーズは今年2022年に登場した新ラインです。
"Saddle up "の直訳は「鞍(くら)を上げろ」です。アメリカ映画などでは「さあ、出発だ」という意味でも使われます。
Saddle(サドル)をLeather(革)をイメージさせる言葉としてとらえ、趣味性で革を扱う人たち向けに開発したラインです。
「ダメージを負って色褪せた革が瞬く間に蘇る」という非日常的な体験を演出することをテーマに掲げています。
このレザーエイジングスプレーにはオイル分が含まれており、オイルドラフアウトに適した油分を補給することができます。
また、クリーム状のオイルとは異なり、スプレーを吹いて油分を補給するため、クリームのように革に塗る段階でラフアウトの毛並みを押さえつけてしまう心配もありません。
毛羽立ちを寝た状態に戻したい場合
RED WING(レッドウィング) ALL NATURAL BOOT OIL
オイルドラフアウトといっても起毛革なので、通常のクリーム状のオイルは革に浸透しづらいため、推奨しません。
そこでおすすめしたいのがレッドウィング純正の液体オイルです。
擦弦楽器の弓の塗布剤にも使われる天然成分「松ヤニ」が含まれています。
松ヤニは粘性が高い成分なので毛羽立ちを抑えて寝た状態にするのにはうってつけです。
また、液体オイルはクリームタイプよりも革の色を濃くする効果が大きいです。
エイジングによって抜けた色を戻してくれる効果が期待できます。
まとめ
本記事をまとめます。
本記事がラフアウト及びミュールスキナーの手入れの参考になったら幸いです。
ちゃんと手入れをしてラフアウトの良さを最大限に発揮しましょう!